東京23区を擬人化し、各区が自分語りするという斬新な短編集です。
各区のキャラクターによって、喋り方もガラリと変わります。
これ、目の付け所が良いと思いました。
そう来たか!そういう手があったか!と。

例えば港区。
六本木は元は軍隊の街で、国立新美術館の辺りは駐屯地だったのですね。
そこらじゅうに兵隊が歩いているような物々しい場所だったこともあり、港区はどんなに面白いことを言われてもピクリとも笑わない超怖いオヤジだったのだそう。
それが180度変わってしまったのは終戦がきっかけだったそうで。

戦争に負けて、この先どうなっちゃうんだろうって思ってたら、米軍がワァーッとやって来て、オキュパイドよ。占領ね、占領。すっかり米軍の街になり、米兵向けの店ークラブ、バー、レストランなんかができるようになって、オレは東京でありながら、アメリカになっちゃったんだ。
最初はさぁ、「えーっ!?」って感じよ。絶対嫌だと思ったね。なんなら自害しよっかな~ってくらい、突っ張った気持ちだった。けどね、あれよあれよという間に占領軍がやって来て、ジープなんかが走るようになるうちに、よくわかんないけど、だんだん楽しくなってきちゃったんだ。

というように、各区の歴史や豆知識を知ることができるのも面白いです。
荒川区には荒川は流れていないとか、江戸川区はインド人が多く住んでいるとか、中野ブロードウェイは当初はお洒落でクールな存在で、沢田研二も住んでいたとか。