私は沼田まほかるさんの小説を全て読んでおり、確かに『ユリゴコロ』と『彼女がその名を知らない鳥たち』が2トップで印象深いのですが、それにしても何故いま沼田まほかる!?今年は沼田まほかる映画祭か?と思うほど。(そしてその両方に出演している松坂桃李。)

かつて黒崎という男に酷い捨て方をされた33歳の十和子は、孤独を埋めるため、うだつの上がらない15歳年上の陣治と暮らし始める。
十和子は、不潔でガサツな陣治を嫌悪し、罵倒しまくるが、かと言って別れる訳でもなく、働かず、家事もせず、陣治のくれる生活費で日がなDVDを観てダラダラ過ごしている。
陣治は、さして美しくもない十和子にどれだけ酷い扱いをされても、十和子にひたすら尽くす。
ある日、とあるデパートにクレームを入れたことをきっかけに、十和子は妻子持ちの水島という男に出会い、不倫関係に陥るが・・・。

原作もそうですが、とにかくずっと不快なのです。
十和子も、陣治も、黒崎も、水島も、誰も好きになれない。
特に、十和子、黒崎、水島の人でなしっぷりは、イライラすること憤死レベル。
むしろここまで不快な人達を描けるって、凄い。
凄いエネルギーの不快さ。

陣治はやたらと十和子の行動に干渉します。
時にストーカーめいた真似もします。
なぜ、陣治はこんなにも十和子のことを心配しているのか。
(まぁ、実際に水島と浮気しちゃうんだけど。でもそれが理由ではない。)

なぜ、十和子はこんなに嫌悪している陣治と別れないのか。
なぜ、陣治はこんなに酷い扱いをされても十和子に執着するのか。

徐々に二人に何があったのかが明らかになっていきます。

ラストは衝撃です。

①美しくない中年男女の一種の純愛。
②なぜ、こんなに酷い扱いをされても別れないのか。
③その理由が徐々に明らかになっていく。
という要素から、『自虐の詩』を思い浮かべました。
(こちらは、女性が男性に酷い扱いをされているのだけど。)

という訳で、決して好きになれないストーリーなのですが、インパクトは非常に大きい。

そして、これが演技だよな、これが演出だよな、と思う。
十和子を演じた蒼井優、陣治を演じた阿部サダヲ、黒崎を演じた竹野内豊、水島を演じた松坂桃李。
全員、素晴らしい。
俳優陣をこれだけ追い込んだ白石監督(「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」)は、やはり力があるなぁと思う。

蒼井優。本作で彼女が美人ではないことが証明されたよ・・・。
美人かどうかは目の大きさではない、鼻が決める、と最近読みましたが、まさにそうだなと。
蒼井優は鼻が残念なんですよね・・・。

まぁでも頑張ってた。これだけブスに見えるほど、振り切った演技をしていた。
陣治を罵倒している時の顔と声、黒崎や水島に甘える時の顔と声、黒崎や水島に酷い仕打ちを受けた時の顔と声。その演じ分けには感心しました。

ただし、小説では気にならなかったけど、生身の人間が演じると、所々リアリティの無さが気になります。

そして私は、陣治がなぜ十和子を愛しているのか、納得しきれていないのですよね。
十和子がもっと美人なら、納得したのかなぁ。
もしくは、陣治を演じたのが阿部サダヲよりも、もっともっと醜い俳優さんなら納得したのかなぁ。
もちろん、美人だから、何かをしてもらったから、という理由で相手を好きになるという方が不純なのかもしれませんし、「そういった理由が無いからこそ、良い」という意見もあるとは思いますが。


4点
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