『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる〈殺し屋シリーズ〉の最新刊です。

主人公の〈兜〉は、超一流の殺し屋なのだが、家では妻に全く頭が上がらず、息子も呆れている。
妻子は〈兜〉が殺し屋であることを知らない。
〈兜〉は文房具メーカーの営業マンとの二足の草鞋を履いているのだ。

とても良かったです。
『死神の精度』に近いかな。
飄々としながらも、温かい。

これまでの〈殺し屋シリーズ〉と、一味違います。
連作短編となっており、〈兜〉は粛々と殺し屋の仕事をこなしていくのですが、それはメインプロットではない。
〈兜〉の夫として父としての物語だなと思いました。

まずは、〈兜〉の殺し屋と家庭との両立の苦労が面白いです。
殺し屋だけど、家庭人でもあるので、自宅の庭のスズメバチに悩まされたり、息子の進路を心配したり。

そして、物語が進むうちに、徐々に〈兜〉の生い立ちも分かってきます。

いつだって、暗いぬかるみの中を歩いてきた。
子供のころから親しい者もおらず、
俯きながら裏道を歩く日々を過ごしてきた。


そんな〈兜〉がようやく手に入れた家族。
本当は息子が生まれた時に、殺し屋の仕事を辞めたかったのです。
でも、そう簡単には足抜けさせてもらえない。
家族を守るために、〈兜〉がした選択とは。

いやぁ、〈兜〉がかっこ良くて、痺れます。
一見、恐妻家で情けないように思えるけど、実は物凄く強くて、気づいてもらえないけど、実は家族を守っている。

正直、〈兜〉の妻が酷すぎて、何で離婚しないのだろう?とも思ってしまうのですが、不意を突かれました・・・。
伊坂さん、上手いなぁ。
これは泣けるよ。
夫婦って良いよね・・・。
未婚の人はきっと結婚したくなるはず。