キム・ギドク監督の最新作です。
キム・ギドク監督の作品を観る度に、今の邦画界では絶対に作れない作品だなぁと思いますし、誰もこんなの撮れないだろうなぁとも思います。

ミンジュという女子高生が殺された。
その一年後、ネットの掲示板で集まった謎の私刑団が、ミンジュ殺しに関った人々を一人ずつ拉致し、リンチを加え、事件の真相を聞き出そうとするが・・・。

ネタバレと思う方もいらっしゃると思うので、御注意頂きたいのですが。
本作が凄いのは、なぜミンジュが殺されたのか、明らかにならないということです。
そういうミステリー的なことがテーマではないのです。

ミンジュ、韓国語で民主主義という意味があるそうです。
このタイトルは、「殺されたミンジュ」と「殺された民主主義」というダブルミーニングになっており、キム・ギドクは本作で韓国社会の現状を痛烈に批判しています。

一人ずつ拉致し、徐々に事件の中枢人物に近付いて行くのですが、誰もが、「上から指示されただけ」と答える。
一人一人が自分の行動の善悪や是非を考えず、上からの指示に盲目に従う。これはもはや全体主義だよねと。

そう言った政治的な要素と、私は人間の存在という哲学的・宗教的な要素も感じました。
ドジョウだけを水槽に入れておくと、敵がいないのに短命となる。だが、そこに雷魚を入れると、雷魚から逃げ回ることでドジョウは長生きする。
人間はお互いを傷つけ合うことで生きていける。

(正確ではないですが)この台詞、突き刺さりました。

私刑団のメンバー7人は、DVに遭っていたり、知人に騙されて無一文になっていたり、それぞれ鬱屈した人生を送っているのですが、その7人を苦しめている加害者をキム・ヨンミンという俳優が一人7役で演じています(彼はミンジュ殺しの関係者の一人も演じているので、合計8役)。この演出、最初はかなり混乱しましたが、象徴的でした。


3.5点(5点満点)
http://www.u-picc.com/one-on-one/