1979年から2017年まで。
ある一家の40年間を長男・守の視点で描いた小説です。

守が小学6年生の時に、看護師でしっかり者の母親が、ギャンブル好きの父親を見限り、離婚。
父親は守の姉を連れて家を出ます。
なぜ、姉を連れて行ったか。それは姉が将棋の天才で、父親は彼女に賭け将棋をやらせ、そのお金で暮らしていくのですね。
こう書くと最低な父親なのですが、姉は好きな将棋ができればそれで良いという変わり者だし、しっかり者の母親が苦手で、父親といる方が楽だと思っているのです。
そして父親も悪い人ではない。父も姉も、毎日きちんと学校に行き、ルールを守って生きている守のことを心から偉いと思っています。

守は非常識な二人を軽蔑しながらも、どこかで二人を、特に将棋という才能を持つ姉を羨ましく思っている。自分には何も無い、自分は平凡な人間だと思っています。

が、誰だって、その人の人生の主人公なんですよね。
守がそれに気付いていく、成長譚でもあります。
タイトルは、将棋で「歩」が成ると「金」になることを指しているのだと。

そんなにページ数は多くないですが、なかなか奥深い小説だと思いました。