朝井リョウさんの新刊です。

幼馴染の雄介と智也の小学校時代から現在(大学生)までを描く連作短編小説集なのですが、視点は彼らと接点を持った第三者によるものになっています。

雄介と智也はタイプが正反対な上にお互いに好きだと思っているようにも感じず、なぜ二人は親しいのか?どちらがどちらに執着しているのか?という主人公の疑問が、そのまま読者の疑問に重なります。

雄介が、かなり痛い人物で、朝井さんが度々描いている「何者かになりたい」タイプなのですね。
「手段と目的」が完全に逆転している。
あることを追求して有名になるのではなく、有名になるためにあることを追求するという。
読んでいて、本当にイライラした。
つまり、それくらい、朝井さんの描写が巧みということです。

また本作は、中央公論新社130周年の「螺旋プロジェクト」の1冊となっており、「海族」と「山族」の対立という共通のテーマも盛り込まれています。
なぜ智也は雄介を見捨てないのか?それがここに隠されているのであります。

今、同プロジェクトの伊坂幸太郎さんの『シーソーモンスター』も読み始めております。