これはもう原作が本当に素晴らしいのですよ。
2016年というのは日本の小説界で言うと10年に一度あるかないかの奇跡の年で、『蜜蜂と遠雷』『マ千ネの終わりに』『みかづき』が刊行されたのであります。

面白い本に出会うとページを繰る指が止まらなくなりますが、その先があるということを私は本作で知りました。面白過ぎて、読み終わるのが嫌で、2度も途中で読むのを止めてしまうという。

私にとってそれくらい衝撃的な小説だったので、実写化には懐疑的でした。
アニメの方がマシではないかと。
でも全くの杞憂でした。
私は少しもガッカリさせられませんでしたし、原作者の恩田陸さんもこれなら喜ばれているのではないかなと。

①予選から本戦まで、繰り返しに思えて飽きてしまうのでは?
結構バッサリ捨てるところは捨てていて、その思い切りに感心しました。
これは監督が脚本も編集も担当した賜物だなと。

②ピアノの差が素人には聴き分けられないのでは?
どれくらいのプロに弾いてもらうのか分かりませんが、その人達は小説の世界の天才達ではないし、観客も殆どが素人なので、聴いていて分かる程の差が出せないのではないかと思っていたのです。
コンクールの課題で、自由演奏(自分で作曲)というのがあるのですが、そこを映画では採用していて、なるほどなと思いました。それなら個性の差を出しやすいですよね。よく考えているなと。

③クラシックに興味が無い人は、演奏シーンで飽きるのでは?
これは映像ならではだなと思ったのですが、音と映像は別のものに出来るのです。要は演奏している音に映像はその人の背負っているものなどをかぶせられると。演奏がBGMになるということですね。これにより、飽きずにコンクールのシーンを観ていられます。

そして改めて俳優さんって凄いなと思いました。
ピアノを弾くシーン、もちろん手元の寄りはプロのピアニストの差し替えでしょうし、引きのシーンも音は差し替えでしょうが、ピアノを習ったことがある人には分かると思いますけれど、この身振りや指さばき、相当に訓練しないと出来ないものですよ。一番の驚きはそこかも・・・。

ところで先ほどアップした「JOKER」の投稿と矛盾しますが、本作の監督である石川慶氏は長編映画の実績が「愚行録」(シリアスを通り過ぎてダーク)位しか無く、本作には向いていないのではないかと思っていたのですが、全くの杞憂でした。抜擢したプロデューサーのチャレンジ精神を称えたいと思います。 


4点
https://mitsubachi-enrai-movie.jp/