窪美澄さんは好きな作家さんで、著作は全て読んでおります。
本作の主人公は52歳の主婦・絵里子。
メーカー勤務の夫と大学生の娘がいて、週に数回、ホームセンターでパートをしている。
平凡だけど特に不満もない結婚生活を送っていると思っていたが、ある日、夫の風俗通いが発覚し…。

展開的には目新しさは無いかもしれませんが、印象的だったのは、絵里子と夫の出会いから結婚までの経緯。結婚前はちゃんと男と女で、それなりのストーリーがあったのに、結婚後は外で働く人と家事をする人という役割分担になってしまう、この無常さに、頭が真っ白になる。

そう、誰と結婚しても、大差ないというか、何かしら色々あるものだと思う。
絵里子と絵里子の母の会話に、「結婚はもう懲り懲り」という一言があるのですが、私も、もし離婚したとしたら、もう二度と結婚しないね。

私は、主語に〈私〉が無いおばさんにはなりたくない。
子供と夫の話しかしないおばさんにはなりたくない。
私がやりたいこと、私が見た映画、私が読んだ本、私が行った場所、常に主語が〈私〉であるネタを持って生きて行きたい。

そういう意味では、絵里子は〈私〉という主語を取り戻せた。
つまり、本作は主婦の成長物語といえよう。