ワタクシ、山内マリコさんの著作は全て読んでいて、一番好きなのが今回映画化された『あのこは貴族』なのです。

山内さんは地方出身の女子を描くのが上手で、そのリアルさに、私にはきっと地方出身者の気持ちは分からないのだろうなと思わせられます。(上から目線とかでは全く無く、自分の引き出しの少なさを痛感させられる。)

一人の男を共通項に、正反対の境遇にいる2人の女性を描いた物語です。
※下記のプロフィールは映画には登場せず原作から補っている部分もあります。

~華子~
父は松濤で整形外科医院を営み、母方も名門。
松濤の実家で暮らし、下からエスカレーター式で名門女子大(多分モデルは聖心)を卒業後、コネで化粧品会社に就職するが、30歳を目前に結婚を焦り始め、先走って会社を辞めるも、恋人に振られてしまう。
義兄の紹介で、弁護士の青木幸一郎と見合いをする。

~美紀~
地方の漁師町から抜け出すべく猛勉強して慶應大学に合格するも、父がリストラされ仕送りが出来なくなったことから、夜のバイトに足を踏み入れ、抜け出せなくなる。(大学中退)
青木幸一郎とは慶應の同級生だが、幼稚舎上がりの幸一郎とは別世界で大学時代はほぼ接点が無かった。(一度、ノートを貸してあげただけ)
美紀が働くラウンジに幸一郎が客として来たことをきっかけに、幸一郎の“都合の良い女”になる。
25歳の時に、お客さんの紹介でIT企業に潜り込む。

青木幸一郎の家は華子の家より更に上の階層で、代々、政治家も輩出しているのですね。
華子はとにかく結婚!と焦り、最上級の幸一郎と結婚できたのに、結婚したらしたで幸一郎の多忙さに不満を覚えます。これには腹が立ったわー。(幸一郎さん、全然悪くないよ!)

美紀の台詞が胸に刺さりました。
「生まれた場所がどこであろうと、最高!と思う日もあれば、泣きたくなる日もある」
(正確ではない。)

本当にそうだと思います。
誰かを羨ましいと思ったとして、仮にその人になれたとしても、それはそれで不満は出てくる。
だから、自分の人生を頑張るしかないのです。

私は夫によく「いつも楽しそうでいいね」と言われ、その度に、「んなわけねーだろ!嫌なことがあっても楽しくしているんだよ!」と思っていたのですが、先日初めて、「いつも楽しそうにしていて偉いね」と言われました。

野村萬斎さんが座右の銘を聞かれ、
おもしろき ことも無き世を おもしろく
生き抜いてこそ おもしろかりけれ
とお答えになっていたのですが、大変共感しました。

ところで、映画を観ながら、この関係性は最近見たぞと思ったのですが、小川アナと豊田さんとA子さんですね。

小川アナに対して男を見る目が無い的なことを言っているネット民がいますが、それはあなたの考えでしょうよと思います。
(小川アナはどうだか知りませんが)世の中には、浮気をしない平均年収のサラリーマンより、浮気はするが年収2,000万以上の外資金融の男が良いという人もいるのです。それはそれぞれの価値観だから、他人が「金目当てでしょう!心が貧しいわね」とか言う話ではない。
本作を観たら、トップの階層ってこういうことなのか!そりゃ価値観違うよねと納得するはず。
華子の家は三姉妹なのですが、三人それぞれ雛人形を持っているのですよ。(一段じゃないよ。)
華子からしたら、雛人形を飾ってもらえなかった美紀は「信じられない」となる訳です。


ちなみに日本人なら誰もが知っている大企業の(当時の)社長の愛人の娘が小学校の後輩にいました。
いつも黒塗りの車で送迎されていましたね。
本妻は愛人に夫の好物の作り方を教えたそうですよ。
それを聞いた時、住む世界が違うのだなぁと思ったものです。

話がものすごく脱線しましたが、映画もよく出来ていました。
監督の岨手由貴子さんは37歳?これが長編2作目とは思えないまとめ上げ方でした。

キャストも良かったです。
大学時代の冴えない美紀になりきった水原希子にプロ根性を感じた。
門脇麦はお嬢様に見えないなぁと思ったのですが、徐々に見えてきた。

3.5点
https://anokohakizoku-movie.com/