知らなかった作家さんで、本作が売れているのは知っていて、2020年度本屋大賞も受賞。
私、本屋大賞に限らず芥川賞も直木賞も興味無いので(年に数冊しか読まない人はそれらを参考にするかもしれませんが、私は一日一冊くらい読んでいるので、むしろ私が選んでやる的な上から目線)、これを書くために調べて受賞を知った次第。

が、本作はとても良かった。

お父さんが病死し、お母さんは恋人を作って消え、引き取られた叔母夫婦宅で中学生の息子から性的いやがらせを受け、居場所が無く、学校が終わっても公園で時間を潰す小学生の更紗。公園には同じく時間を潰している文という大学生がいて、ある日、文は更紗にうちに来る?と声を掛けます。
更紗は文の家が居心地がよく、両親がいなくなって以降、初めてちゃんと眠れる。
更紗を助けてくれたのは文だけだった。
でもそれは誘拐ということになり、文は捕まってしまう。

それから時が過ぎ、更紗は大人の女性となって、文と再会してしまいます。

文は更紗におかしなことは一つもしなかった。
おかしなことをしたのは叔母の息子なのだ。
でも世間は誰も信じてくれず、更紗を腫物として扱う。
二人の関係を認めてくれる人は世界中に一人もいない。

確かに更紗の行動にはかなりイライラさせられます。
DVの彼氏から逃げるのですが、アルバイト先を変えないので、もちろんすぐに住んでいる所もバレてしまいます。
バカなの?と思います。

ですが、文章がとても良い。
文体も心理描写も上手いなぁと思う。
そして構成も良い。

後半、えー!そういうことだったの!と見ていた景色がガラリと変わります。

更紗と文の関係が〈恋愛〉ではないのも良いです。
そういう次元を超えた、世界中で一緒に生きて行けるのはこの人しかいない感。

映像化すると気持ち悪い感じになりそうだから、しないで欲しいなぁ。