とても良かったです。
アカデミー賞絡みの映画、私は「キャロル」が一番好きなのですが、万人受けするのは本作ではないでしょうか。

17歳の時に拉致され、7年間も小さな「部屋」に監禁されているジョイ。
彼女の救いは5歳になる息子のジャックだ。
自分を拉致監禁している、生物学的にはジャックの父親でもあるオールド・ニックが、仕事を首になり金銭的に困窮していることを知ったジョイは、「部屋」から逃げることを決意する。
しかしそれは、ジャックの命をかけることにもなる方法だった。

まず何よりも、ジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイの演技が信じられないほど上手い。
みんな思っているだろうけれど、「一体どうやって撮ったの!?脚本はどうなっているの!?」と仰天しました。

映画やドラマの不自然なところの一つとして、「会話がかぶらない」という点があると思います。
ジョイが作戦をジャックに説明すると、ジャックは全身で拒否反応を示します。
「その話嫌い!」「ママなんて大嫌い!」
「もう5歳になったんだから、ちゃんと聞いて」
「だったら4歳に戻る!」「6歳になったらやる!」
このやり取りが凄いんですよ。
台詞はかぶりまくるし、本当に生々しい。
きっとカッチリ台本があるのではなく、ワークショップの延長戦のような感じで撮っていったのではないかなぁ。

初めて空を見た瞬間のジャックの表情!
もちろんジェイコブ自身は生まれてからずっと空を見ているのです。
どうやって、「知っているのに、こんなにも初めて知ったかのような顔が出来るのだろう?」と。

そして、ストーリー。
「脱出できました!めでたしめでたし」では終わらないところが良いのです。
その後、どんなことが待ち受けているのか、リアルではこういうことなのだろうな・・・と痛感します。

ジャックは、ジョイとオールド・ニック以外の人間を生で見るのは初めてなのです。
全ての音も光もジャックには過剰で、外は広すぎて、恐いのです。
最初は「部屋に帰りたい」とも思ってしまうジャックですが、さすが子供ですね、すぐに順応していきます。

一方、命がけの脱出に成功したジョイは、遅れてPTSDの症状が出てきます。

娘を拉致監禁した男によるレイプの結果であるジャックを受け入れられない、ジョイの父親。

離婚後、別のパートナーと暮らしている母親に、ジョイは八つ当たりしてしまいます。
その際の母親の「あなただけが人生壊れたと思わないで」という台詞が突き刺さりました。
二人の離婚の原因は、もちろんジョイの誘拐な訳です。

親友達と一緒の写真を見れば、「彼女達は良いよね、誘拐されなかったんだから」と思ってしまうジョイ。

今後の生活費のためテレビのインタビューを受けることを決意したジョイ。
インタビュアーの、「犯人に頼んで、ジャックだけでも孤児院の前とかに置いてきてもらうということは考えなかったのですか?ジャックを自由にしてあげようとは思わなかったのですか?」という質問がダメ押しとなり、ジョイは完全に追い詰められてしまいます。
(うーん、でもさぁ、ニックにジャックを渡したら殺しちゃうかもしれないし、託せるはずないよ。)

その後のジョイとジャックがどうなったかは、ぜひ劇場で。
最後になってしまいましたが、どうやって脱出できたのか(偶然の幸運も含め)も、ぜひ劇場で観て欲しいです。


4.5点(5点満点)
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