趣味の為に生きて行く。

グルメ、本、映画、旅行をメインにアップしていきます。

恩田陸 『終わりなき夜に生まれつく』(文藝春秋)

タイトルを見て、アガサ・クリスティーと同じだなと思ったのですが、そもそもウィリアム・ブレイク(よく洋画とかに出てくる)の詩なのですね。

なんとなく想像がつくのではないかと思いますが、アガサ・クリスティーは殺人鬼を、本作は特殊能力を持つ在色者を描いています。
終わりなき夜を生きて行くしかない者たちの苦悩ですね。

かなりエグイので好き嫌いがはっきり分かれそうなのですが、私は恩田さんの『
夜の底は柔らかな幻』がすごく好きで。
(恩田さんは「地獄の黙示録」をやろうと思ったのですって。)
「X-MEN」もですが、特殊能力を持って生まれてしまった者たちの苦悩というテーマが好きなのです。

本作は『
夜の底は柔らかな幻』のエピソード・ゼロというポジションなので、こちらとセットで読まないと意味が無いです。
後の稀代の犯罪者・神山が生まれる出発点というか。
神山の人生のターニングポイントというか。

神山は本当は静かに生きて行きたかっただけなんだろうな。
切なくて良いです。

彩瀬まる 『眠れない夜は体を脱いで』(徳間書店)

深夜のネットサーフィン。
とある掲示板で、手が好きなので、あなたの手を見せてください!という投稿を見付けた人達の短編小説集です。

美しい顔で生まれてしまったがために、同性にも異性にも勝手なイメージを持たれてしまっている男子高校生。
女性という性になじめない(けれど女性が好きな訳でもない)50代の女性。
彼氏の亡くなってしまった美しい元カノの影に怯える20代の女性。

などなど、生きにくさを感じている人達の物語です。
(彩瀬さんはいつも同じテーマを貫いている。)

短編集なので、読み応え感は薄いですが、彩瀬さんは年齢も性別も様々な人達の感情を、よくぞここまで書き分けられるなと。
やはり上手いなぁと思います。

桐野夏生 『デンジャラス』(中央公論新社)

桐野さんの新刊です。

谷崎潤一郎、その妻の松子、松子の妹の重子、重子の息子の嫁の千萬子。
重子の視点で、谷崎潤一郎をめぐる四角関係が描かれています。

谷崎潤一郎の作品は、全てが私小説とまでは言わないものの、常に身近な女性がモデルになっています。
せめて谷崎潤一郎の代表作である『細雪』くらいは読んでいないと、面白くないかと。
『細雪』のモデルが、重子たち四姉妹であることは知っていたのですが、『鍵』の敏子と『瘋癲老人日記』の颯子のモデルは千萬子だったのか。

この千萬子が本当に嫌な女で、私が松子だったら、発狂していたかも・・・。
谷崎が自分に惹かれていることを利用し、取り入り、虜にし、あらゆる高級品を買ってもらい、生活費をもらい、ついには家まで建ててもらっちゃう。
他人事ながら、歯ぎしりしそうになりながら読みました。

それにしても、やはり、谷崎潤一郎って、変態だったのだなぁ・・・。
『鍵』を読んだ時に、変態!?と思ったのですが、実生活もそうだったのね。
(『鍵』のあらすじを書くのは憚れるので、ネットで調べてみて下さい。)

お母さんではなく女でいて欲しいと、松子が妊娠したら堕胎させたり。
前妻・千代子に対してもひどかった。
千代子の妹であるせい子(『痴人の愛』のモデル)を好きになってしまい、友人に千代子を譲渡したり(後に撤回)。

・・・この人、文壇では尊敬されていたのかしら??

島本理生 『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』(幻冬舎)

一見おとなしそうだけれど、芯が強くて仕事好きな30歳の知世。
年上のエンジニア・柴田さんと出会い、徐々に惹かれていくのだけれども、彼は大きな病を抱えていて・・・。

大きな病と言っても、深刻な展開にはなりません。
初出は「BIRD」というライフスタイル誌(現在は休刊中)ということもあり、最初はふわっとした印象なのだけど、徐々にジワジワ効いてきます。
島本さん、やはり上手いなぁ。

友人に、「そんな病気を抱えた人でなくても、ほかにもいい人いるって」と言われた知世の返しが印象的です。

「いないよ。なに一つ特別じゃない私の話をいつまでも飽きずに聞いてくれて、真剣に心配したり、絶対に傷つける言葉を使わずにアドバイスをくれたり、旅行をすれば、楽しくて、なにを食べても二人一緒なら美味しい。初めてだったよ。そんな人」

泣ける。

私、よく友達や後輩女子達に、「好きな人と一緒に暮らせる人が必ずしも一致する訳ではない」と言っています。
もちろん、イコールだったら、とても幸せだけどね。でも結構奇跡だよね。
だから、知世もこう言ったのでしょう。

ただし、主人公の知世の章よりも、友人の茉奈と神田ちゃん(二人とも独身)、知世の妹の千夏(既婚)の章の方が面白いです。
たぶん、知世って島本さん本人がトレースされているのだと思う。
だから、ぶっちゃけきれていないというか、やたら心情描写が言い訳がましくて、イライラするの。

でも、他3人は赤裸々。
茉奈は二股男と別れられず、神田ちゃんは年上の既婚者とデートを続け、千夏もナンパしてきた男とのメールを支えにしてしまっている。

瀬戸とかいう女の中には、手をつないだ夜だけが残った。
そして妻の私には、手を振り払われた思い出が今も残っている。


千夏は夫の言動にピンときて、携帯を見てしまうのですね。
そこには瀬戸という女から、「一度だけ手をつないでもらった夜のことは忘れません。それ以上の関係になりたいなんて望みは捨てます。それでも、新しい恋に出会うまでは、心の中で好きでいていいですか?」というメールが。
(あざといー!なんてあざといんだ!!でも男は騙されるだろうなーー。)
でも、夫はかつて、手をつなごうとした千夏を「手をつなぐのは苦手」と拒否したのです。

うわー、きっと女性なら分かるよね、このショックさ!
夫は手をつないだだけで何もないと言うのでしょうね。
きっと、妻が何に対して悲しんでいるのか、分からない。

他にも色々、おぉう・・・という描写がありますよ。
池井戸さんと両極端ですね。
ストーリーか心情描写か。


池井戸潤 『アキラとあきら』(徳間書店)

いきなり文庫で発売ということで、ドラマ化が先で、本を出したのではないかなと思いました。

零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社の御曹司・階堂彬。
生まれも育ちも違う同い年の二人が、ともに東大に進み、同じ銀行に就職。

まぁ、完全に想像のつく内容で、想像通りに話が進んでいきます。
正直、ストーリーやキャラクターの面白さというよりは、池井戸さんのアイディアって凄いなと。
破たん寸前の会社を救うウルトラC的な手法が、銀行とは程遠い(頭を使わずひたすら調整)仕事をしている私には新鮮で、さすが池井戸さんは三菱銀行に入行しただけあるなと思います。

池井戸さんの小説は全て読んでいるのですが、池井戸さんは、キャラクターを描くのが上手くないですよね。
小悪人はどこまでいっても愚かな小悪人として描かれる。
人間ってもっと複雑なものだと思うけど。

でも良いのか。
心情を描く小説ではないし、登場人物の性格が複雑だと、ストーリーが進まなくなるものね。
この手の小説に、そういった複雑な心情描写は不要ということでしょう。
それも取捨選択、潔さということか。

桜庭一樹 『じごくゆきっ』(集英社)

どうしても好きになれない作家が何人かいます。
道尾秀介、誉田哲也、百田尚樹、重松清、そして女性では桜庭一樹。

桜庭さんは、『私の男』で心底嫌になり、しばらく手に取らず、久々に『ばらばら死体の夜』を読んだら、やっぱりダメだ!となって、それ以来読んでいなかったのですが、本作はついうっかり読んでしまった。
家にあったので。

結論。
3度目の正直ですよ。もう桜庭一樹とは断絶します。

7つの短編が収録されているのですが、SF?
どれもどんな話かも説明できない。
ストーリーが無い。

いつもいつも自意識過剰気味なタイトルと、可愛い表紙に反してエグイ内容とか、気持ちが悪くなります。

貫井徳郎 『宿命と真実の炎』(幻冬舎)

『後悔と真実の色』の続編ですが、読んでいなくても、なんとかなるかと。
(かつて名探偵と呼ばれた西條という元刑事が共通の登場人物です。)

幼い頃に離れ離れになってしまった誠也とレイ。
大人になって再会したふたりは、警察への復讐を誓い、その計画を着実に遂行する・・・。

警察官の連続不審死事件が起きます。
事故や自殺に見せかけられており、最初は連続殺人事件とは気付かれない。
理那という女性刑事が彼らの共通項に気付き、でも犯人に裏をかかれまくってしまい、元刑事の西條に助言を求めます。

誠也とレイの計画がすごいです。
連続殺人事件なのだけど、木を隠すなら森の中的な展開に、ひえーとなります。

他にも小説ならではのどんでん返しもあり、面白いです。
ラストの8ページに仰天しました。



中山七里 『ドクター・デスの遺産』(KADOKAWA)

中山七里さんの「刑事・犬養隼人シリーズ」の第4弾です。

ドクター・デスと名乗る安楽死請負い人が連続殺人を犯す話です。

社会派ミステリーとしては、ちょっと緩さを感じる部分もありますが、安楽死や死ぬ権利について考えさせられます。
ドクター・デスに依頼した人達は、当人も(死ぬ瞬間に実際どう思ったのかは分からないけれど、亡くなる寸前までは)、家族も、みんなドクター・デスに感謝しているのです。

私も全身に大火傷を負って、痛くて痛くて一睡もできない状態で、今後も回復の見込みが無いのなら、死なせて欲しいと思うだろうなと。

考え方の違いだけだよ。
だって家族を死なせたくないのも、苦しませたくないのも、根は同じ思いやりなんだから。
という台詞が印象的でした。

ラスト、どんでん返しがあります。
これ、私は普通に騙された。



森絵都 『出会いなおし』(文藝春秋)

森絵都さんの新刊です。

年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、
出会いなおすということだ。

同窓会から輪廻転生まで、様々な再会を描いた6つの短編が収録されています。

同窓会で15年前の誤解が解ける「むすびめ」がホロリときました。

辻村深月 『かがみの孤城』(ポプラ社)

主人公はイジメに遭い学校に行けなくなった中1のこころ。
5月のある日、突然自室の鏡が光り始め、こころは鏡をくぐり抜ける。
その先にあったのは、城のような不思議な建物で、こころと似た境遇の7人が集められていた。

7人の前に狼の仮面を付けた少女が現れ、この城の中に隠された「願いの部屋」とそこに入る「鍵」を見付けた者はどんな願いでも叶うと告げる。
期限は3月30日。
城に入れるのは9時から17時まで。

7人はイジメや家庭の事情で不登校になっており、徐々に城での生活が支えになっていきます。
それぞれが抱えている事情が明らかになり、そして驚くような共通点が他にあることが発覚し、そしてラスト。
最初からファンタジーなんだけど、ものすごくダイナミックなファンタジーに変わるというか。
あぁ、そういうことだったのか!と。

私の好きな、一人一人の今この瞬間の選択が未来を作るというテーマを感じました。

辻村さんは最近、大人の女性を主人公にした作品が多いですが、今回は初期の頃のような作風。
でも大人だろうと子供だろうと、生き辛さを感じている人を主人公にしているのは共通しています。

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