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カテゴリ: 本(日本人作家)

垣谷さん、今度のテーマは〈墓じまい〉か!

垣谷さん、映画化されましたが老後の資金やら遺品整理やら高齢者免許返納やら、社会問題をテーマにした小説をたくさん書かれていますが、どれを読んでも共通しているのが、結婚したくなくなること(笑)

本作も、男どもは、墓を守るとか家を継ぐとか偉そうに言いますが、お墓の掃除はしない、高齢で移動が大変だからと実家にも帰らない。でも墓や実家が無くなるのは嫌という自分勝手…。

私はお墓要らない。
さすがに燃えるゴミ(燃えない?)で捨てられたりトイレに流されたりするのはアレだけど、でもまぁ、死んだら分からないし、その辺に散骨で構わないのだけど、散骨って許可が必要なんだよねぇ。
夫は鳥葬〈で〉良いと言っていたけど、鳥葬って、チベットでも高位の僧侶しかやってもらえないそうで、徳を全く積んでいない夫は箸にも棒にも掛かりません。

そもそも、普段全く信仰心が無いのに、死んだ時だけ戒名もらったり念仏唱えてもらったりして浄土に行こうなんて虫が良すぎるんですよ。
そう言えば、かつて母が教会に通っていたのだけど、周囲の人達が株が上がりますようにと祈っているのを見て、げんなりしたと言っていたなぁ。


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窪美澄さんは好きな作家さんで、著作は全て読んでいるのですが、本作はちょっとステレオタイプな小説だなと思いました。

血の繋がらない継母の美佐子さんと二人で暮らしている海は、転校先の高校で、忍という同級生の男子と恋に落ちるが・・・。

小さい頃から可愛いものが好きで、女男と虐められてきた海は、中学生の時に自分は男性が好きなのだと気付きます。
そんな海を父の緑亮は「海は海。コロはコロ。みんなそれぞれ違う人。だけどいっしょにいたいから」と受け止めてくれていたのに、カメラマンの夢を捨てきれず、ある日、美佐子と海を捨て出奔してしまうんですね。

同性を好きになった忍と親との確執とか、どこかで読んだことがあるような小説だなぁと思わなくもないですが、海、美佐子、忍、璃子(海と忍の同級生)、緑亮とそれぞれの視点で描かるという形式は好きです。
それぞれが違う景色を見ていることに気付くから。


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井上さんの短編集。
10篇が収録されており、どれも人間の闇を描いており、じわじわ来ます。

「みみず」がインパクトあったなぁ。
不倫相手が身体目当てと言っているのは照れ隠しで、本当は自分のことを愛してくれているのではないかと信じたい主人公が、他の男性と試し、身体が良くないと言われたいと願う話。

全く想像もしたこともなかった。
こういう人間の心情があることに気付く井上さんが凄いなぁと。

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『汝、星のごとく』のスピンオフ的な。
北原先生の過去を描いた「春に翔ぶ」
櫂を担当した漫画と小説の2人の編集者を描いた「星を編む」
北原先生と暁海のその後を描いた「波を渡る」
の3つの中編が収録されています。

凪良ゆうさんはここ数年の私のイチオシの作家さんで。
『流浪の月』『滅びの前のシャングリラ』『汝、星のごとく』全て傑作。
とにかく文章が上手いし、感情描写が素晴らしい。

が、本作は私はあまり好きになれなかった。
いつも通り文章は素晴らしいのだけど。
自分の負の部分に気付かされてしまいました。

私は何度も書いていますが、「フランダースの犬」「火垂るの墓」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が苦手で。
善良な人々が不幸になる話が震える程嫌なんだけど。

北原先生の過去の話を読んで気付いた。
私は彼らを善良ではなく愚かだと思っているのかも。
何でそんなことしちゃうの!?と彼らの選択がたまらなく嫌なんだと思う。

という訳で、北原先生の過去の選択、私は好きではなかった。
私はこれに感動出来ない。
私は優しくないんだと思う。でもそれで良い。
私は品があって公正な人間でありたいと思っているけど、優しいと思われたいとは思っていない。

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表題作のホットプレートの他、ゼリー型、ピザカッター、鉄鍋、コーヒーサーバーなど、食にまつわる道具をモチーフにした短編小説集です。

どれもなんてことのない話に感じるかもしれませんが、ちょっとした日常の人間の感情を描くのって難しいと思うんだよね。
井上さんは上手だなと。

レストランを営む夫婦が、高校生の息子と友人による貸切りクリスマスパーティーで、息子を巡る三角関係にやきもきしながら料理を提供する話が良かった。

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私は国語の偏差値(と瞬発的な暗記力)だけでここまでやってきて、全国模試で(国語だけ)1位(満点だったから)を取ったことも何度かありますが、意味が分からなかったなぁ。
やはり芥川賞系の小説は合わないんだよなぁ・・・。

世間からバッシングを受け、引きこもっている競歩選手のしふみが、動物園の雌のボノボ〈シネノ〉と邂逅し、魂をシンクロさせていく。

しふみはシネノを、赤ん坊の頃に言語教育の実験を一緒に受けたボノボだと思うのですが、これが事実なのか思い込みなのかは分からない。(確かにシネノはかつて言語の機械学習を受けており、しふみの親は霊長類研究所で働いていてボノボに実験を行なっていたという設定なのだけど。)

種族を超えたシスターフッド的な書評も読みましたが、あまりピンと来なかったなぁ。

高い教育を受けたことがあり、種族ではなく個として扱われたいシネノと、バッシングを受け、個ではなく種族になってしまいたいしふみという構図は面白かった。

かんむりは/ヒトにもらうものでなく/自分で/自分に/さずけるもの
というのは良かったな。

文体は大変個性的で私にはとても書けないものだなと素直に賞賛。
(宇佐見りんにも同じことを思った。面白いと思えないけど、文体は真似できない。)


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塩田さんは現代の松本清張だね。
松本清張、横山秀夫のライン。
素晴らしかったです。

平成3年に神奈川県で起きた幼児誘拐事件。
身代金の受け渡しに失敗し、犯人は逃走。
4歳の内藤亮は帰ってこなかった。
それから3年後、亮が突然祖父母の家に帰ってくる。
彼は3年間どこに居たか一切語らず、祖父母も警察を拒絶。
彼は3年間、誰と過ごしていたのか・・・?
それから30年後、物語は動き始める。

亮は母親に育児放棄されていて、男が家に来ると暑い夏でも寒い冬でも外に出され、ガリガリで汚れていたんですね。
それなのに祖父が金持ちだったことで誘拐されてしまった。
でも3年後に祖父母宅に帰ってきた時には、健康できちんと躾も受けており、そして絵の才能も伸びていた。
一体この3年間、誰に育てられていたのか。

切なくて苦しくて、後半はとにかく祈るような気持ちでページをめくりました。
どうかこの心優しき人達をこれ以上、苦しめないで下さい。

私は善良な人達が不幸になる話が本当に苦手で。
このブログでも何度も書いていますが、「フランダースの犬」「火垂るの墓」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が本当に無理で震える。

社会派の塩田さんだけあって、今回は美術業界の闇も描かれているのですが、美術業界も「白い巨塔」と同じなのね…。
それを考えると、功罪ありますがSNSによって大分変ってきたのではないかなと。
日展の会員にならなくても、画廊を通さなくても、絵を売る方法はあるし、ブレイクするきっかけも作れる。

中高生時代の亮に、完全にハートを鷲掴みされました。
理想のタイプ過ぎる。
こういう孤高の(でも優しい)天才タイプに弱いのです。
古くは「ハンサムな彼女」の熊谷一哉とか…。
あの写真のエピソードなんて、羨望でしかない。


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貫井さんは好きな作家の一人で、著作全て読んでおります。
ベスト3は『乱反射』『愚行録』『慟哭』なので、結局のところ、私が好きなのは初期作品ということなんですよね…。
本作は前半面白かったのですが、後半失速し、最後の畳み方は雑だなぁと。

実際の殺人事件と、元警察官がプレイするVRゲームが交互の描かれ、どのようにリンクしていくのかなと。

リンクするまでにページを割き過ぎで、リンクしてから犯人を突き止めるまでが雑で…。
さすがにそんな簡単に絞り込めないでしょうよと。
どうしたんだろう…貫井さん、途中で書くの嫌になってしまったのだろうか…。

一応、匿名によるネット上での誹謗中傷という社会派なテーマも。

誰かが、悪意には後ろめたさというストッパーがあるが、正義感にはそれがないから質が悪いと書いていましたが、本当にその通り。
本人は正しいことをしていると思っているから、止まらないんだよね…。

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西加奈子さんの8篇の短編集です。
西さんが乳がんを患って以降に発表したものもあり、主人公が乳がん患者という設定も3篇あります。

生き辛い世の中になっているなと日々のニュースに暗澹たる気持ちになりますが、
もっと自分を大事にして良いんだよ、
自分のことを一番考えてくれるのは自分なんだよ、
と背中を押してくれる小説です。

私がいつも思うことは、「みんな、自分がいつまでも生きると思うなよ」と。
私がトルコで気球に乗ったとSNSでアップしたら、いつか自分も乗りたいという声を多数頂いたのですが、いつかっていつ??

コロナ禍で、みんな死を身近に感じたはずなのに、喉元過ぎるの速いよねぇ。
私は常に明日死ぬかもしれないと思って生きている。
自分で自分の人生を楽しくするんだよ。

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好きな作家さんはたくさんいるのですが、ここ2~3年のイチオシは、凪良ゆうさんと一穂ミチさんですね。

本作は6つの短編が収録されているのですが、帯の惹句には〈鮮烈な犯罪小説集〉とありますね。
どれもちょっと恐ろしく、ハッピーエンドのものもあればビターエンドのものもあり、そして全て意外な結末を迎えます。

とにかく上手い!
隕石が落ちる訳でもゴジラが襲ってくる訳でもない、日常を描いているのに、一穂さんの人間観察力と描写力が凄い。
文章にしにくい、形にしにくい、人間のモヤモヤした仄暗い感情を描き切っている。

個人的に好きなのは『特別縁故者』。
パンデミックで仕事を失い妻の収入に頼る男が、隣人の老人の〈特別縁故者〉になろうと画策する話。

子供に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えろ。
ちょっと違うけど、この言葉を思い出しました。


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