趣味の為に生きて行く。

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伊坂幸太郎 『AX』(KADOKAWA)

『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる〈殺し屋シリーズ〉の最新刊です。

主人公の〈兜〉は、超一流の殺し屋なのだが、家では妻に全く頭が上がらず、息子も呆れている。
妻子は〈兜〉が殺し屋であることを知らない。
〈兜〉は文房具メーカーの営業マンとの二足の草鞋を履いているのだ。

とても良かったです。
『死神の精度』に近いかな。
飄々としながらも、温かい。

これまでの〈殺し屋シリーズ〉と、一味違います。
連作短編となっており、〈兜〉は粛々と殺し屋の仕事をこなしていくのですが、それはメインプロットではない。
〈兜〉の夫として父としての物語だなと思いました。

まずは、〈兜〉の殺し屋と家庭との両立の苦労が面白いです。
殺し屋だけど、家庭人でもあるので、自宅の庭のスズメバチに悩まされたり、息子の進路を心配したり。

そして、物語が進むうちに、徐々に〈兜〉の生い立ちも分かってきます。

いつだって、暗いぬかるみの中を歩いてきた。
子供のころから親しい者もおらず、
俯きながら裏道を歩く日々を過ごしてきた。


そんな〈兜〉がようやく手に入れた家族。
本当は息子が生まれた時に、殺し屋の仕事を辞めたかったのです。
でも、そう簡単には足抜けさせてもらえない。
家族を守るために、〈兜〉がした選択とは。

いやぁ、〈兜〉がかっこ良くて、痺れます。
一見、恐妻家で情けないように思えるけど、実は物凄く強くて、気づいてもらえないけど、実は家族を守っている。

正直、〈兜〉の妻が酷すぎて、何で離婚しないのだろう?とも思ってしまうのですが、不意を突かれました・・・。
伊坂さん、上手いなぁ。
これは泣けるよ。
夫婦って良いよね・・・。
未婚の人はきっと結婚したくなるはず。


浦賀和宏 『眠りの牢獄』(講談社)

本作で初めて知った作家さんです。
1978年生まれ、19歳で第5回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。
本作の刊行は2001年、浦賀氏が23歳の時です。

二つの話が交互に描かれていきます。

5年前、自宅の階段から突き落とされ、今なお昏睡状態の亜矢子。
事故当時、現場に居合わせた浦賀、北澤、吉野は、亜矢子の兄によって地下シェルターに監禁されてしまう。

恋人に振られて恨みを募らせている福山冴子は、ネットで知り合った友人から交換殺人を持ちかけられる。

一見、何の関係も無さそうな二つの話が繋がっていきます。

叙述トリック(登場人物の性別や事件の発生した時間や場所などを示す記述を意図的に伏せることで、読者をミスリードし、読後の衝撃をもたらす)によるドンデン返しが複数仕掛けられていて、面白かった。
一気読みしました。

先に言っておくと、グロいシーンもあるので、ご注意を。

ドロシー・L・セイヤーズ 『誰の死体?』(東京創元社)

映画「オリエント急行殺人事件」が公開しましたが、アガサ・クリスティと並ぶイギリスの女性推理作家と言われているのがこのドロシー・L・セイヤーズなのだそうです。

名門デンヴァー公爵家の次男で、趣味は古書収集と犯罪捜査。
本作は、ピーター・ウィムジイ卿という貴族探偵シリーズの第1作です。

ある建築家の自宅の浴室に、忽然と見知らぬ男の死体が出現する。
男は素裸で、つけているものといえば金縁の鼻眼鏡だけ。
そしてほぼ同時に、死体の男性と姿形の酷似した金融界の名士が謎の失踪を遂げていることが判明する。

この二つの事件がどう繋がっていくのか。

正直、ミステリとしては、オチ含めてそんなに感心しなかったのですが、ピーター卿のキャラクターと台詞が良いので、このシリーズは読み進めていこうかなと思っています。


ちなみに私は早川書房から出ているアガサ・クリスティの著作89作を昨年から今年にかけて読破しております。
ポアロシリーズですと、やはり『アクロイド殺し』『オリエント急行の殺人』『三幕の殺人』『ABC殺人事件』『ナイルに死す』と有名なものが実際に面白かったです。
なお、「ナイルに死す」も実写映画化が決まったそうですね!
私はこの小説に出てくる、“男を愛している女と、女に愛させている男”というポアロの台詞に衝撃を受けました。
アガサ・クリスティはトリックの面白さはもちろんのこと、時にドロドロの人間模様が抜群に面白いのであります。
去年から海外古典ミステリを少しずつ読み進めているのですが、他の作家のものがつまらないのは、トリックだけで人間を描けていないからだなと。

ガストン・ルルー 『黄色い部屋の謎』(東京創元社)

ガストン・ルルーと聞いてもピンとこないかもしれませんが、あの『オペラ座の怪人』の作者です。
ガストン・ルルーの小説を原作に、アンドルー・ロイド・ウェバーがミュージカルを作ったと。

スタンガーソン博士の邸宅にある「黄色い部屋」で、彼の令嬢の悲鳴と銃声が聞こえた。駆けつけた一同がドアを壊し部屋の中に入ると、そこには血まみれの令嬢の姿があった。
犯人のいた痕跡は残っていたものの、姿はすでに無い。部屋はほぼ密室状態にあったにもかかわらず、犯人はどうやって消えたのか。
若き新聞記者ルールタビーユはこの謎に挑む。

本作は心理的密室トリックと犯人の意外性により、推理小説史上の古典傑作と称されているそうで、帯に北村薫氏が「本格ミステリの歴史の上で、これは見逃せない一冊なのです」というコメントを寄せています。

確かに、犯人は意外。
密室トリックも、その後の多くの作家に影響を与えただろうとは思う。

が、小説として面白くなかったなぁ。
このオチにしては、そこまでのストロークが長すぎる。
翻訳の問題かしらん?

ジョン・ディクスン・カー 『三つの棺』(早川書房)

「ミステリ・ファンならば、必ず読まなければならない作品」ということで、読んでみました。

ジョン・ディクスン・カーと言えば、密室物。
本作は、カーの「ギデオン・フェル博士シリーズ」の一作で、以後の作家やミステリファンに大きな影響を与えた密室物なのだそうです。

グリモー邸に仮面を付けた男が現れ、グリモーの部屋に押し込んだ。
鍵がかけられた室内から銃声がしたため、扉を破ると、グリモーが胸を撃たれて倒れていた。
しかし犯人の仮面の男は煙のように消え去っており・・・。

トリックが複雑すぎて、確かによく考えたなとは思うけれど、机上の空論に思えました。
これ、実写化したものを見たら、無理があると感じそう。

そして、翻訳がイマイチなのだと思うけれど、文章がとても読みにくく、トリック云々の前に小説として面白くなかった。
どうやら私は旧訳のものを読んでしまったらしく、新訳のものは読みやすくなっているようです。


フレッド・カサック 『殺人交叉点』(東京創元社)

今年から、海外古典ミステリを少しずつ読んでいるのですが、なかなか面白いものが無いのですよ。
当時は斬新だったのかもしれないけど・・・、とか、これってミステリ??というものが多くて。
が、本作はかなり面白かった!!
(今のところ、ベスト3は『毒入りチョコレート事件』『五番目のコード』そして『殺人交叉点』です。)

表題作の「殺人交叉点」と「連鎖反応」の中篇2篇が収録されています。

まず、「殺人交叉点」は、湊かなえの『告白』のようなスタイル。
被害者の母親と犯人の独白が交互に描かれ、事件の全容が明らかになっていくのですが、この独白に熱量があり、グイグイ引き込まれます。
そして叙述トリック(登場人物の性別や国籍、事件の発生した時間や場所など、一部の描写をわざと伏せたり曖昧にすることで、読者の先入観や思い込みを利用し、ミスリードする仕掛けのこと)を使っており、ラストはおぉ・・・!と。

「連鎖反応」は、なんと、日本でも2回もドラマ化されていました。
しかも1回目は、脚本・倉本聰!
こちらは、憧れの女性との結婚を目前に、浮気相手を妊娠させてしまった男が殺人を犯すのですが、その相手も理由もぶっ飛んでいます。
あと、ラストのオチも凄い。
「世にも奇妙な物語」でドラマ化したら面白いと思いました。

ウィリアム・モール 『ハマースミスのうじ虫』(東京創元社)

元々は詩人で、本作がミステリ長編デビュー作とのこと。
1955年に刊行され評判になったものの、絶版状態となっていた幻の名作が、2006年に再翻訳で復刊。
という帯に惹かれて読んでみました。

ワイン商の主人公が恐喝犯を追いつめていく、素人探偵もの。
なんですが、追いつめていく過程に、推理やトリックみたいなものが殆ど無く、これってミステリ??と。
人間ドラマ??
面白がるポイントが分かりませんでした・・・。
当時は斬新だったのかしら・・・。

やはり、名作と言われる昔のミステリって、リスキーだなぁ。
と思いつつも、次はフレッド・カサックの『殺人交叉点』を読む予定です。

真梨幸子 『祝言島』 (小学館)

真梨さんの小説は、叙述トリック(登場人物の性別や事件の発生した時間や場所などを示す記述を意図的に伏せることで、読者をミスリードし、読後の衝撃をもたらす)を使ったイヤミスというのが持ち味なのですが、今回はイマイチだったなぁ。
色々なものを伏せ過ぎて、七並べで止めまくって最後カードをさばききれなくなり負けちゃった人みたいになっている。

2006年12月1日、東京で3人の人物が連続して殺され、未解決となっている「十二月一日連続殺人事件」。
無関係と思われる3人の共通点が「祝言島」だった・・・。

タイトルで、桐野さんの『東京島』みたいな小説をイメージしていたのですが、全然違った。
かつて祝言島にいたことがある人達の因縁の話です。

と言うと面白そうに聞こえるかもしれませんが、登場人物が多すぎて、しかも色々なことを伏せ過ぎて、散漫になっているなと。
しかもこんなに散漫なのに、350ページ近くて、無駄に長い・・・。

なお、五島列島に実在する祝言島とは無関係です。

荒井修子 『蒼玉の令嬢』(河出書房新社)

ドラマ「マザー・ゲーム」「水族館ガール」「ツバキ文具店」等を手掛けている脚本家の荒井修子さんの小説デビュー作です。

いやはや、面白かった!
もちろん脚本家としてはベテランの荒井さんですが、小説と脚本は全然違うとも聞きます。
デビュー作で、こんなに書けるんだ・・・、しかも時代物・・・と驚きました。
文章が安定していて、最初から最後まで全くブレません。

舞台は昭和始め。
勲功華族である秋島家の長女で高校生の比佐子は、貿易業を営む父にせがみ、台湾出張に同行させてもらう。
その帰路の船中で、比佐子はユキという少女に命を救われる。
ユキは密航者であり、自らの立場が危うくなるにも拘らず、見ず知らずの比佐子の命を救ってくれたのだ。
比佐子の懇願により、ユキは無事に日本に戻ることができる。
それからしばらくした後、東京で再会した比佐子にユキはサファイアを託すが・・・。

比佐子とユキの身分を超えた友情。
そして比佐子の初めての恋。
(比佐子の恋が切ないのよ・・・。)
という青春小説でもあり。
蒼玉を巡るミステリーでもあり。
よくぞこのページ数に収めたなと思うくらいの時代小説でもあります。

冒頭とラストが対になっているのですが、私は完全に騙された!

ダイナミックな話なので、映画化したら面白いのではと思いつつ、JK映画しか作れない今の日本。
「はいからさんが通る」的なアニメという手もあるかも!と思いました。

中山七里 『秋山善吉工務店』(光文社) 

火災で家と主である史親を失った秋山家。
残された妻の景子、中学生の雅彦、小学生の太一の三人は、史親の実家「秋山善吉工務店」に世話になることになったのだが・・・。

この秋山善吉というのが、昔気質の職人で、頑固でおっかないのだけど、一本筋が通っている。
太一は転校先のクラスメイトからいじめられ、雅彦は半グレに転落しかけ、景子はパート先の量販店で悪質クレーマーに絡まれると、それぞれトラブルを抱えるのですが、善吉が助けてくれます。
という連作短編と中に、あの火災は実は放火だったのではないか?というミステリーの軸が通っていると。

気軽に読める内容。
ですが、あまり残るものはないです。

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