趣味の為に生きて行く。

グルメ、本、映画、旅行をメインにアップしていきます。

カテゴリ: 本(日本人作家)

私にとって生きることは周りを気にするということと同義で、
それがない生など考えたこともなかった。

そんな真野が、コロナで派遣切りに遭い、辿り着いたのがイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」だった。
そこには個性豊かなバイトメンバーがいて…。

真野の視点でバイト仲間との日々を描いた連作短編小説です。

真野は自分のことをウルトラノーマルだと思っているけれど、真野の心情はすごく面白くて。
これを全部、ちゃんと口に出せば良いのになぁと思うけれど、どんな人でも頭の中でぼやっと考えていることを文字に起こしたら、句読点無しの金原節になるのかもしれない。


米澤穂信さんは好きな作家さんの一人で、著作は全て読んでいるのですが。

「このミステリーがすごい!」第1位、「ミステリが読みたい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位と2023年のミステリランキング3冠だそうです。

え、これが???
と思ってしまった…。
今年はミステリ不作の年だったのでしょうか…。

群馬県警を舞台にしたミステリで、5本の短編が収録されています。
葛警部が主人公なんだろうけど、キャラクターが弱いなぁ。
(食事はいつも菓子パンとカフェオレというのは狙い…?)

①何で刺殺したのか?
②何故全員が偽証したのか?
③何故バラバラにしたのに遺体を見⑤つかりやすい場所に棄てたのか?
④連続放火の意外な動機とは?
⑤ファミレスで起きた立てこもり事件。避難した客と店員の証言がかみ合わず?

といった謎を解き明かします。
②~④は意外な動機というので括れるかな。
そこは面白くない訳ではないのだけど、でもやはり3冠獲るような作品とは思えない。

〈加賀恭一郎シリーズ〉の最新刊です。

ここ10年の東野さんは凡作を量産しており、本作もつまらなくはないけれど、加賀恭一郎シリーズとしてはイマイチです。

まず、加賀恭一郎の魅力が全く伝わらない。

別荘地で起きた連続殺人事件。
犯人はすぐに自首してきたが、動機など一切語らず、疑問点も残る。
遺族達は検証会を開くことにするが…。

その検証会に、休暇中の加賀が呼ばれるのです。

基本的にひたすら検証会の場面が続くので、動きが無いし、ずっと説明台詞なんですよねぇ。
最後にドンデン返しがありつつも、犯人は何となく分かってしまった。

感動の要素は無く、ラストもイヤミスっぽさが残ります。

白石さんは一貫して同じテーマを書き続けていると私は思っており、本作も同様。
人間にとって最も重要なのは、お金でも地位でも無く、魂が繋がっている相手である。

今回は不倫ではなく、バツイチの50代男性と、夫を亡くしている40代女性の物語です。
年齢を高めにしたのは、恋愛と結婚がイコールではないように描くためとのこと。
白石さんは、結婚は〈子孫を残す生殖活動〉と切り離せず、その行為自体には物語がないと考えているそうです。書きながら、恋愛は40歳を過ぎてからするものだという思いを強くしたとのこと。

私も基本は同じ考えで、なので白石さんの小説が好きなのですが、とは言え、そのような太い絆を築けない人もいると思うのですよね。そういう人は人生に絶望しなければならないのか?と訊かれたら、そうではないと。多分、ベターハーフ(魂の片割れ)なんて、見付からないことの方が多いと思うのですよ。だからこそ、もし見つかったら、相手や自分が結婚しているとか関係ない、ということなのだろうなと。

いま結婚している人に、相手と魂で繋がっているか?と訊いたら、どれくらいの人がそうだと答えるだろうか…。

「無人島に三つ持っていくとしたら、なにを持っていく?」
バーの常連客同士の他愛無い会話が、命がけのサバイバルゲームに発展していく。

面白かったです。

年齢も職業も様々な男女8人が、無人島バトルロワイヤルに強制参加させられます。
最後の1人(or2人)になるまで、救助が来ないという設定。

最初は皆で協力して全員で生き残ろうという話になるも、意外な人が裏切り、疑心暗鬼から、殺し合いになってしまうと。

それぞれのアイテム、職業、趣味などをどう活かすか。
優しい人だと思っていた人が意外な本性を露呈するとか。
一章ずつ異なる人物の視点で描かれるのも良いですね。

なぜ最後の1人or2人なのか。
ドンデン返しも面白かった。

映画化しそう。
足手まといになると最初にハブにされたバカップルを浜辺美波と赤楚衛二あたりに演じてもらいたい。


今さらながらの初・乙一さん。
本作がデビュー作です。

9歳の夏休み、弥生はちょっとした嫉妬から友人の五月を殺してしまう。
事故だったと嘘をつき、兄の健に死体隠蔽を手伝ってもらうが…。

話としてはどうってことないし、健が小学生にしては不自然な話し方なのも気になるけど、この作品のポイントは、殺された五月の視点で描かれるということですね。
もう死体となっているのに、好きだった健に裸足の足を見られるのを恥ずかしがったりとか。


井上夢人さん、岡嶋二人の一人ですね。
本作がソロになってからの初作品です。

警備保障会社に勤める西岡悟郎は、とある新興宗教の道場を警備中に火事に遭遇。
それ以来、頭の中で別の誰かの声がするのだ。
その火事亡くなった教祖の魂が乗り移ったのか…。

教祖は自殺だったのか、殺人だったのか。
声と一緒に真相に迫ります。
並行して、教祖の娘と恋愛関係に。

いくつかドンデン返しはあるのですが、それより誰かが乗り移っているというシチュエーションが飛び道具過ぎるような。

井上さんの『ラバー・ソウル』が傑作です。

岡嶋二人さんはデビュー作の『焦茶色のパステル』しか読んでいなかった。
本作が代表作(そして本作で解散)だそうですね。

ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけでヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることになった青年、上杉。
アルバイト雑誌を見てやって来た少女、高石梨紗とともに、謎につつまれた研究所でゲーマーとなって仮想現実の世界へ入り込むことになったが…。

ミステリというより、徐々に現実と仮想現実の境目が無くなっていく様が面白かった。
リーダビリティがあり、一気読み。
ラストも印象的。

『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX』に続く、伊坂さんの〈殺し屋シリーズ〉第4弾です。

『マリアビートル』はタイトルを「ブレット・トレイン」に変え、ブラッド・ピット主演で映画化されましたね。ブラッド・ピットが演じた不運な殺し屋・七尾(通称・天道虫)が本作でも主人公です。

『マリアビートル』は、”スーツケースを持って新幹線に乗り、次の駅で降りる”というだけの簡単な仕事だったはずなのに、次々と不運に見舞われ新幹線を降りられませんでしたが、本作も同様。
”ホテルの宿泊客に荷物を届ける”という簡単な仕事のはずなのに、ホテルから出られない(笑)

モウフとマクラ、高良と奏田、6人組といった殺し屋や、おばちゃんハッカーのココさんなど、強烈なキャラクターが次から次へと出てきて、話が複雑化して、そして収束。
いつもながら、伊坂さんの頭の中はどうなっているんだー!と。

私は本作で完全に七尾に惚れた。

タイトルが良いなと。
現在公開中のオゾン監督の最新作「私がやりました」のように、犯人ではないのに自分が殺したと言い張る人に、理路整然と穴を突き、よって、あなたには殺せませんと告げる刑事の話かと思ったら、全然違った。

罪を犯すか悩む人が相談にやってくる駆け込み寺のようなNPO法人があるという設定。
相談員は倫理的に諭すのではなく、聞き出した犯行計画の穴を論理的に次々と指摘していきます。
これが面白い。

で、これこれこうなので、あなたには殺せませんと告げられるのですが、相談者は、AIではなく人間だから、合理的ではない道を選んじゃうんだよねぇ。
それぞれ意外な展開に。


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