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カテゴリ: 本(日本人作家)

横山秀夫さんの6年ぶりの新作です!

一級建築士の青瀬が信濃追分に建てた吉田邸は自身の最高傑作とも言え、「平成すまい200選」にも選ばれた。
だが、吉田はそこに住んでいないどころか、引っ越した形跡も無かった。吉田一家はどこへ行ってしまったのか・・・。

今回の主人公は刑事でも記者でもなく、一級建築士。
そしていわゆるミステリーではありません。

青瀬が吉田を探すうちに、自分の過去や別れた妻子と向き合っていくという話で、白石一文さんの小説とかそっち系。

『クライマーズ・ハイ』や『64』みたいな怒涛の展開が無いので、つまらないと思う人もいるかもしれませんが、私は内面をうじうじ引っ掻き回す系の小説が結構好きです。
そして何より描写が美しいなと思いました。



SNS、ネットショッピング、動画撮影。
スマホに依存する中年の男女を描いた3つの中篇が収められています。

1話目のSNS依存の話が一番印象に残りました。
専門学校の同級生である40代の男女3人が、LCCでクアラルンプールに(貧乏)旅行に行くのですが、ひたすら写真や動画を撮ってSNSにアップ。もはやSNSにアップするために旅行にいっている。

屋台で食べた料理に対し、主人公のハネケンは内心こう思っています。
正直、ここが日本だったらどれもお金を払う気にもなれないような料理ばかりだ。
だけど、そんなことはどうでもいいんだ。
僕が本当はどう感じたかなんて、たいしたことではないのだ。
大切なのは、料理が美味しそうなこと。
旅が楽しそうなこと。
僕らが幸せそうなことなんだ。


本谷さんは、痛い人たちを描かせたらピカイチ。
読んでいて彼らを嘲笑う気持ちになるというよりは、痛々しくて見ていられなくなる感じ。

タイトルは存じ上げていたのですが、描写がエグイと聞いていたので、なかなか読む勇気が出ず。ここへきて、えいやで読んでみました。

連続猟奇殺人犯の蒲生稔と、彼を捕まえたい被害者の関係者達。
思っていたほどエグくなかったぞ(誉田さんの『ジウ』はエグすぎて途中で挫折した…)と思いながら、ほぼラストまで読み進めた私は、ラストの1行で、「えぇー!?」となりました。
私が今まで読んでいたものは何だったの!?と、頭からざざっと読み返したもんね。
という訳で、叙述トリックです。
まんまと騙されましたが、小説としてはこんなに有名になるほどの出来栄えとは思えず。

何を今更・・・と仰る方も多いと思いますが、いやはや傑作でした。

実の親からも疎まれるくらい醜い顔をした鈴木誠は、学校にも行かず(行けず)社会と断絶し、ビートルズにのめり込み、洋楽専門誌にビートルズの評論を寄せるまでになる。
ひょんなことからその雑誌の撮影に立ち会うことになった誠は、モデルの美縞絵里に恋に落ちてしまう。

ビートルズの「ラバー・ソウル」というアルバムに収められている楽曲と同じタイトルで章立てされています。
鈴木誠の独白と、周囲の人間たちの証言で物語が進んでいきます。
ずっと鈴木誠のエキセントリックなストーカー話かと思って読み進めていくと、ラスト、椅子から転げ落ちそうになります。

読んだ後、しばし呆然。
切なくて泣けました・・・。




良かったです。読み応えありました。
コスタリカのアンダーズに滞在中(まだアップできていませんが・・・)、ひたすら読書していたのですが、その中で1、2位で良かったのがこちら。(もう1作はこの後にアップする『ラバー・ソウル』です。)

高級老人ホームで暮らす笹本弥生という資産家が殺される。
犯人はいつも金を無心していた孫なのか・・・。

誰が犯人なのか?というミステリとしての面白さももちろんありますが、何よりも笹本弥生の一代記がすごく面白い。
関東大震災と東京大空襲を生き延び、闇市から女一人で伸し上がった笹本弥生の大河ドラマですね。
私にもこういうナニクソ根性が少しでもあれば・・・。


音楽スタジオの控室で人気絶頂の歌手ROMMYが絞殺死体となって発見される。
限られた関係者しか出入りのなかったスタジオ。
この中の一体誰がROMMYを殺したのか?

事件を追う時系列の軸と、ROMMYが無名だった頃から応援してきた中村くん視点の軸と、2つの軸で描かれていきます。

ROMMYの生い立ちが切なくて、ROMMYには生きていて欲しかったので、早々に殺されてしまったことで、やや気持ちがめげましたが、二転三転あり、衝撃のラストを迎えます。

なぜ死体をバラバラにしたのか。
そんな動機もあるのね!!!




すっかりハマりましたマリア&漣シリーズの第3弾です。

希少動物の密売ルートを捜査中のマリアと漣は、得意先に不動産王のヒュー・サンドフォードがいることを掴む。上層部からの捜査打ち切り命令を無視した二人はサンドフォードタワーの爆破テロに巻き込まれてしまう。
同じ頃、サンドフォードタワーの最上階ではヒューの所有するガラス製造会社の社員と関係者が監禁されていた。

3作とも後味がビターなのですが、今回が一番後味悪いかな。
前2作は切ないビターさで救いも感じるのですが、今回は救いがない。


『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くマリア&漣シリーズの第2弾。

両親の虐待に耐えかねて逃亡したエリックは、遺伝子研究を行っているテニエル博士の家に保護される。
一方、マリアと漣は、不可能と言われている青いバラの開発に同時期に成功したテニエル博士とクリーヴランド牧師の調査を始めていた。その矢先にテニエル博士が首を切断され殺害されてしまう。


マリアと漣パートと、エリックの視点と交互に描かれていきます。

『ジェリーフィッシュは凍らない』もそうでしたが、このシリーズはトリックも巧みなのですが、犯人の動機が切なくて人間ドラマとしても面白い。


『ジェリーフィッシュは凍らない』の記事はこちらから。
http://tomosan63.blog.jp/archives/36223228.html


弟・襾鈴の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允。
そこは大鏡様という現人神によって支配され、外界と遮断されていた。


そんな閉鎖された村で次々の殺人事件が起こり、珂允が疑われるのですね。


私はこういう横溝正史っぽい世界観は嫌いではないのですが、いかんせん、ミステリとしてどうなの?と思う所が多々あり。
メルカトル鮎も登場しますが、あまり活かされていると思えない。
「鴉」も関係無いじゃん…。
なぜ1998年の「本格ミステリベスト10」の1位に選ばれたのか分からん。

小泉さんのデビュー作です。

ストリッパーのミミィ・ローズこと漣子が八島財閥の御曹司である杉彦に見初められ、玉の輿に乗る。が、その幸せも長くは続かなかった。ある晩、杉彦の父親が何者かに殺されたのだった。

私は完全に騙されました。
1963年の小説なので文体もやや古めかしいし、ストーリーもよくある感じじゃん?と思いながら読んでいたら、ラストでガツンとやられました。
私の好きな叙述トリックです。

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