趣味の為に生きて行く。

グルメ、本、映画、旅行をメインにアップしていきます。

カテゴリ: 本(日本人作家)

かつてファムファタルと称された美しき歌姫・リズ。
彼女とは似ても似つかない容姿の孫の歩は、ファッションデザイナーという職に就きながらも、祖母と比べられるのが嫌で七光りを生かせないでいた。
そんな歩がある日、落ち目のモデルのジョージと出会う。
ジョージは歩のブランドの立て直しを勝手に手伝ってきて…

彩瀬さんいわく、これは「ガールミーツボーイ」ものだそう。

正直、ストーリーの展開はややありきたりに思えましたが、この小説の良さは“視点”にあります。

歩が大事にしているテディベアのぬいぐるみ。
その双眸は、かつてリズがお守りにしていた天然黒真珠と人工黒真珠で出来ているのですが、この二つの黒真珠の視点で物語が描かれていくのです。

もうねー、二人(真珠だけど)が健気で。
特に人工の方。ちょっと泣けた。


第26回鮎川哲也賞受賞作で、昨年、第三弾の『グラスバードは還らない』も出版されています。
今更ながら、一作目から読み始めました。

小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉の航行試験中だった技術開発メンバー6名全員が、閉ざされた雪山で死体となって発見される。
どうやら不時着の上、誰かに殺されたようだ。
だが、犯人はどこから来て、どこに消えたのか?

閉ざされた雪山とうことで、クローズドサークルものと言えるでしょう。
しかもそれに叙述トリックも加わっており、私の好きな展開でした。

真相を追うマリア&漣という刑事パートと、ジェリーフィッシュで何が起きたのかという犯人目線のパートが交互に描かれます。

7人目はどこから来て、どこに消えたのか?
トリックが見事でした。

1979年から2017年まで。
ある一家の40年間を長男・守の視点で描いた小説です。

守が小学6年生の時に、看護師でしっかり者の母親が、ギャンブル好きの父親を見限り、離婚。
父親は守の姉を連れて家を出ます。
なぜ、姉を連れて行ったか。それは姉が将棋の天才で、父親は彼女に賭け将棋をやらせ、そのお金で暮らしていくのですね。
こう書くと最低な父親なのですが、姉は好きな将棋ができればそれで良いという変わり者だし、しっかり者の母親が苦手で、父親といる方が楽だと思っているのです。
そして父親も悪い人ではない。父も姉も、毎日きちんと学校に行き、ルールを守って生きている守のことを心から偉いと思っています。

守は非常識な二人を軽蔑しながらも、どこかで二人を、特に将棋という才能を持つ姉を羨ましく思っている。自分には何も無い、自分は平凡な人間だと思っています。

が、誰だって、その人の人生の主人公なんですよね。
守がそれに気付いていく、成長譚でもあります。
タイトルは、将棋で「歩」が成ると「金」になることを指しているのだと。

そんなにページ数は多くないですが、なかなか奥深い小説だと思いました。



『静おばあちゃんにおまかせ』の第二弾。
元判事の高円寺静が今回コンビを組むのは、孫娘ではなく、「香月地所」を一代で築いた要介護の香月玄太郎。
二人が事件を解決していく短編小説集です。

静は最初、玄太郎とは距離を取りたかったのだけど、なんだかんだ巻き込まれ、コンビを組むことになってしまいます。
謎解きより、凸凹コンビ感を面白がる感じでしょうか。

高校のアイドル的存在だった楓が転落死する。
事故か自殺か、はたまた殺人か。

楓の同級生である慎也と、慎也の従兄弟で刑事をしている公彦。
二人が真相を解明していく話です。
なので、タイトルに“子弟”と入っています。

ライトな学園物ミステリーですね。
中山さんの幅の広さには感心しますが、やはりもっと一作一作に入魂して欲しいです。

真相にまるで驚きも無く、娯楽としては良いのかもしれませんが、残るものが全く無い。

山本幸久さんの小説は読むとほっこりします。
好きな作家さんの一人で、著作は全て読んでおります。
(ドラマ化されているのもあるのですよー。)

元ムード歌謡の歌手で、今は函館の小さなスナックを営んでいる野原ゆかり、67歳。引退して22年経つが、とある事情から昔のツテをたどり、ドサ回り中である。しかも、函館から本州に向かうフェリー内でひょんなことから知り合った12歳の少女付き。

なぜか行く先々でトラブルが起こり、コンサートが中止になってしまうのですね。
その珍道中と、彼女の過去が交互に描かれていき、コメディとビターが良い具合に入り混じります。
最後はちょっと涙出た。



ワタクシ、2014年から5年日記をつけていまして。
2018年で1冊終了し、2019年から2冊目に突入しました。
で、日記を見返しながら、2018年を振り返ります。
(なお、本と映画のマイベストは、2018年に発売・公開されたものから選びました。)

【読んだ本】
116冊(2014年は195冊…!)
★マイベスト★
吉田修一『ウオーターゲーム』(幻冬舎)
辻村深月『噛み合わない会話と、ある過去について』(講談社)
三浦しをん『ののはな通信』(KADOKAWA)
平野敬一郎『ある男』(文藝春秋)

【観た映画】
74作(2014年は140作…!)
★マイベスト★ 
「オーシャンズ8」
「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」
「キングスマン:ゴールデン・サークル」
「カメラを止めるな!」
「勝手にふるえてろ」

【観た舞台】
17公演(うち萬斎さん関連が16公演)

【観た美術展】
7展
★マイベスト★
至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」@国立新美術館

【バレエに行った回数】
108回×90分

【旅行】
イタリア(ナポリ・カプリ・アマルフィ・マテーラ・アルベロベッロ)
ドイツ(ロマンチック街道など)
オーストリア(ザルツブルク、ウィーン)
上海
北海道・京都・大阪・奈良・岡山・山口

【2018年に行ったレストランの数】
おそらく694店舗(食べログの記録参照)
★マイベスト★
京味(和食)
銀座しのはら(和食)
まき村(和食)
東京和食五十嵐(和食)
友栄(鰻)
鮨 なんば 日比谷(鮨)
すし 喜邑(鮨)
鮨 猪俣(鮨)
はっこく(鮨)
尚充(鮨)
一幸(鮨)
カンテサンス(フレンチ)
ASAHINA Gastronome(フレンチ)
西麻布K+(イタリアン)
SUGALABO(フュージョン)
長谷川稔(フュージョン)
SATOブリアン(焼肉)
USHIGORO S. NISHIAZABU(焼肉)
焼肉ジャンボはなれ(焼肉)

映画鑑賞数と読書量が5年前から半減しております。
バレエとブログに時間を割かれているからです。
本当に忙しい。
よく会社辞めたいと言う私に、「退屈するよ?」と言う人がいるのですが、お金さえあれば退屈なんてする訳ないよ。
本当は中断しているピアノの練習と英語の勉強も再開したいのだから。

15年後に届けられたラブレター、礼状、遺書、脅迫状、受賞通知。
それにより、受け取った者たちの運命が変わっていき…。

これも設定は面白いと思ったのですが、思っていたような話ではなかった。

本当にこういう企画があって(つくば万博の際に実際にあったんですよね)、ちゃんと送り手に明確な意図があって、15年後に相手にラブレターや受賞通知が届くようにしたということなら面白いと思うの。
でも今回の小説は、送り手にそんな企画に参加した憶えが無く、なぜ相手に15年後に届けられたのかも分からないという設定で、面白さがズレているように思えました。
その点含め二重のミステリーになっていて、複雑な構成になっています。

タイトルと「2019 本格ミステリ・ベスト10」の第1位に選ばれたということで、興味を持ちました。

捜査一課の新米刑事である主人公が、たまたま腕時計の電池交換のために入った商店街の時計店で奇妙な張り紙を見つける。
「アリバイ崩し承ります」
まだ20代半ばの女性店主いわく、先代の方針で時計にまつわる依頼は何でも承るというのだ。
ちょうどアリバイの問題で頭を悩ませていた主人公は、つい、彼女にアリバイ崩しを依頼してしまう。

短編小説集になっていて、1話1話のアリバイ崩しがトリッキーでアクロバティックです。

設定が面白いですよね。
日テレが日曜22:30枠で、高畑充希か橋本環奈あたりんでドラマ化しそうと思った。
のですが、1話あたりがかなり短いのと、安楽椅子探偵ものなので、かなり埋めないとこのままでは難しいだろうなと思いました。

大学生の群像劇で連作短編集になっています。

朝井さんは本当に心情描写が上手いです。
人が目を背けたいと思う自分の心の奥底のドロドロしたものや、他人に知られたくない恥ずかしい感情を、まさに!という文章で書き起こします。えぐっているとも言える。

朝井さんの冷静な観察力と分析力に慄くことがあります。
恋人のこともこんな風に分析してしまうのだろうか…。
(男はちょっと鈍感なくらいがちょうど良いかもしれません。)

連作短編集の良いところは、同じAさんでも、視点によってイメージがガラリと変わることですよね。

本作でも、同じコンビニでアルバイトしている男子大学生から格好良いと思われているダンサーの女子が、実はそこまでダンスの実力が無く、男子大学生とやり取りしている時だけ自分が何者かに思えるという話があり、印象的でした。

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