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カテゴリ:本(日本人作家) > 柚木麻子

苦学生の真央がアルバイト先のスーパーで出会った試食販売員の四葉さん。
四葉さんはお金をかけずとも丁寧な暮らしをしていて、真央に色々なことを教えてくれます。
家族との縁が薄い真央は、20歳以上も年上の四葉さんがいつしか心の支えになる。
だが、そんな四葉さんを真央は裏切ってしまう。

実は四葉さんは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残りで、元々はものすごいお嬢様だったんですね。
でも次々と不運が重なり没落してしまったと。

真央は四葉さんのかつての親友と繋がり、四葉さんのこれまでの人生を知ります。

私、善良な人間が辛い目に遭う話がとことん苦手で。
嫌いな物語トップ3が、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「フランダースの犬」「火垂るの墓」です。
なので本作も読み進めるのが辛かった…。

まぁ四葉さん自身は、自分が稼いだ富ではないしと、あまり執着していないのだけど。

あと、真央が全く好きになれないキャラクターだったな…。
まず第一に四葉さんにしたことが許せない。
会わせる顔がなかったんだろうけど、あまりに不義理…。
そして、借金(奨学金)を背負って大学に行ったのに、就職活動ちゃんと頑張らなくて失敗し、卒業後もギリギリの生活を送っているって、ちょっとどうなのよと。
まぁ、努力できることも才能って誰かが言っていたけど…。

柚木さんは好きな作家の一人で、著作は全て読んでいるのですが、『ランチのアッコちゃん』を筆頭にホワイト柚木の作品は合わないんだよなぁ。

好きなのはブラック柚木の作品で、『終点のあの子』『嘆きの美女』『けむたい後輩』『早稲女、女、男』『王妃の帰還』『伊藤くんAtoE』『ナイルパーチの女子会』『BUTTER』です。

つまり、『BUTTER』以降はピンと来ず。
本作も好みではなかった。
コメディ寄りの短編小説集なのですが、どの話も主人公が好きになれず。

高級鮨屋で赤ちゃん連れ主婦がパパ活おじさん達をけむに巻く『エルゴと不倫鮨』は面白かった。

ENEOS前会長である杉森氏の醜聞が話題になっていますが、私は本当に不思議なんだよね。
なぜおじさん達ってその顔と年齢で、若い女の子とどうにかなろうと思うんだろう。
パパ活したとして、彼女達はあんたのことなんて、1ミクロンも好きじゃないんだよ。
目当ては金なんだよ。
それって空しくない??
「きっとキモイと思っているんだろうな・・・早くお金もらって帰りたいと思っているんだろうな・・・」と思わないのかね?
いや、思った方が良いよ!!まじで!

柚木さんの母校、恵泉女学園中学・高等学校の創立者、河井道をモデルにした大河小説。

そうなんだー。
本作、評判良いのか…。
今度こそ直木賞と言われているのか…。

私は柚木麻子さんが好きで著作は全て読んでいるのですが、『王妃の帰還』『伊藤くんAtoE』とか初期の頃の方が良かったなぁと思っているのですよね。なんならデビュー作の『終点のあの子』の方が本作より好き。最近(と言っても2015年)だと『ナイルパーチの女子会』とか、目に見えない人間の感情を描写するのが上手だなと思っている。

本作はとにかく長い。
長いのにダイジェストみたい。

道の師である津田梅子を筆頭に有名人のオンパレード。
広岡浅子、村岡花子、平塚らいてう、新渡戸稲造、有島武郎、野口英世、徳冨蘆花、太宰治…。
こういう人間関係だったのか!というのは面白いのだけど、あまりにダイジェストで、心情描写が弱く、登場人物達が記号のようでした。

それにしても出てくる男の作家がダメダメだね。
私、こんなに小説が好きなのに、日本の昔の小説がピンと来ない理由がわかった。
女は苦しんでこそ、辛い目に遭ってこそ、美徳みたいな精神が気に食わないんだよ。

若い頃に女優をしていた正子は、75歳を目前に復帰。
携帯電話のCMも決まり、「理想のおばぁちゃん」としてブレイクを果たした矢先に、家庭内別居中の映画監督の夫が急死。しかも仮面夫婦であったことが世間にバレ、手のひらを返されてしまう。
そこに亡き夫を慕って映画監督志望の杏奈という若い女の子が転がり込んできて・・・

正子の再生と復活の話でもあるし、杏奈をはじめとした正子の周囲にいる人たちの再生と復活の話でもあります。

が、なんだか登場人物たちが作者の都合で動いている気がして、所々、不自然さを感じた。
ラストも、こんな捻り、求めてないです。
素直に終わって欲しかった。

柚木麻子さんの最新刊。

夫の母の喫茶店で働く佐知子には、アイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーを務める実花という親友がいる。
佐知子にとって実花こそが憧れのアイドルだったのだが、その実花が突然“婚活”を始め、人が変わったかのように焦り出す。

結婚を焦り、結婚したら子供が出来ないことに焦り…。
常に焦らされている女性達を解放したい。
ということがテーマなのだろうけれど、女の友情など他に色々な要素を盛り込み過ぎて、一体何の話なのか、何が言いたかったのか伝わらない。


柚木麻子本にはホワイト柚木とブラック柚木があると思っています。
ホワイトは『ランチのアッコちゃん』『あまからカルテット』『私にふさわしいホテル』『その手をにぎりたい』『本屋さんのダイアナ』『ねじまき片想い』『奥様はクレイジーフルーツ』。
ブラックは『終点のあの子』『嘆きの美女』『けむたい後輩』『早稲女、女、男』『王妃の帰還』『伊藤くんAtoE』『ナイルパーチの女子会』『BUTTER』。
ブラックというのは、重い・暗い話ということではなく、柚木さんならではの意地悪な視点(褒めてる)で人物を描いているものというイメージです。
私は断然、ブラック柚木が好き。

で、本作ですが、どちらでもないのです。
新・柚木麻子というか。
柚木さんが、窪美澄さん(常に喪失と再生を描いている)みたいな小説を書いてきたなと。

主人公は大手コーヒーチェーンで働く28歳の井出菫。
ある日、菫は、
かつて恋人に撮られたヌード写真がネットにアップされていることを偶然発見する。
6年前、自ら切り出して別れた光晴にそんなに恨まれているのだろうか?

菫の視点と光晴の視点の両サイドから描かれています。

写真を発見した時の、息ができなくなり、地面がスポンジのようになる様子。
28年間続いてきた日常が崩れ、もう二度と戻らないと思ってしまう様子。
とてもリアルに描写されています。

光晴が痛い男なんですよ。
一見明るいのだけど、実は不安定で、菫がどこまで自分を赦してくれるか試そうとする。
そしてその赦しこそが愛だと勘違いしている。
まっすぐに育ってきた菫に憧れの気持ちと妬ましさを感じている。
何かあると、自分の家庭環境を楯にする弱さと狡さを持っている。
が、ブラック柚木なら、もっととことん意地悪な視線でえぐっていただろうなというところ、救いを持って描いています。

時々、「陰のある人が好き」とか言ってる人(男女問わず)がいますが、はぁ?って感じ。
あのね、結婚は生活だから。
陰なんて、1ミクロンも要らないから。
真っ直ぐ育った心根の健康な人が一番だよ!
理想は佐々木健介!



男達から次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された梶井真奈子。
世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。
週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。

柚木さんが描く“木嶋佳苗事件”。

木嶋佳苗への怒りって、
男からのものは、「あんなブスと付き合ってやったのに、裏切りやがって」みたいなことだろうし、
女からのものは、「あんなに太っているのに、自己評価が高すぎる」みたいなことですよね。

印象に残った箇所を抜粋します。

梶井の事件は最初こそ面白がられましたけど、男性読者を不愉快にし、落ち着かない気分にさせるんですよ。
打算に打算を重ねて、自分を傷つけなさそうな女を注意して選んだのに、結局ドツボにはまるっていうところが、日常レベルで我が身にも起きそうでみんな怖いんですよ。

ただでさえ成熟よりも処女性が尊ばれる国だ。
女は痩せていなければお話しにならない、と物心ついた時から社会にすり込まれている。
ダイエットをせず太ったままで生きていく、という選択は女性にとって相当な覚悟を必要とするだろう。
それは何かをあきらめ、同時に何かを身につけることを要求される。
ところが、梶井は何よりもまず、自分を許している。己のスペックを無視して、自分が一人前の女であることにOKを出していたのだ。


入り口のモチーフは木嶋佳苗事件ですが、里佳を通じて、読後に感じたのは「女として生きて行くことの不自由さ」みたいなものでした。

この人が女だったら絶対にこのポジションにつけなかったろうなというダメなおじさん部長。
その一方、女が部長になるには、男の10倍働かなければならない。

なぜ女は仕事に可愛げまで求められねばならないの?

共働きなのに、なぜ妻が毎日子供のお迎えに行くことになっているの?
なぜ妻は毎日早く帰らなければならないのに、夫は飲みに行くの?
え?それも仕事?でも女は飲まなくても仕事回るよ?

などなど、働く女性が抱いている日々のモヤモヤ。
それを梶井は最初から放棄している。
それが里佳を混乱させ、今までの価値観みたいなものを崩壊させます。
(だからー、サイコパスとは関わっちゃダメなんだよー。)

梶井の言い分。

男を赦し、包み、肯定し、安心させ、決して凌駕しないこと。
たったこれだけのことでいいのです。
どうして世の婚活女性たちはいつまで経っても理解しないのでしょうか?
そんなの人間じゃないみたい? 
私は声を大にしていいたいのです。
すべての女は女神になればいいのだ、と。


なるほどね・・・とも思いますが、でも私はできないし、やりたくない。
そんなことするくらいなら、働く。
女神になって金持ちの男をつかまえて働かないという生き方よりも、男無しで自分のお金で好きな物を食べ、好きな物を買いたい。
(これはもう平行線だわね。)

最後に。
私も読んでいて混同しそうになりましたが、あくまでもモチーフなので。
梶井=木嶋佳苗ではありませんので。



『ランチのアッコちゃん』『3時のアッコちゃん』に続く第三弾。
4つの中編から構成されています。

やりがいや自分の居場所を見出せないでいる者が、アッコちゃんこと黒川敦子と月~金と過ごすうちに、気づきを得て、新しい一歩を踏み出していくというもの。

このシリーズ、やや自己啓発本的な要素もありますよね。

アッコちゃんの、何もやりたくない、何からやって良いか分からない時は、出来そうなことから一つずつやっていくと、とにかく少しは物事が進んでいくという言葉(正確ではない)を思い浮かべながら、ここ数日を乗り越えていっています。

でも、「アッコちゃんの前向きさが、見知らぬ誰かを傷つけていることもある」というのも、今の気持ちにはグサッときました。

そう。あのね、何もやりたくない人もいるの。
何もやりたくない時期ってあるの。

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