趣味の為に生きて行く。

グルメ、本、映画、旅行をメインにアップしていきます。

カテゴリ:本(日本人作家) > 凪良ゆう

『汝、星のごとく』のスピンオフ的な。
北原先生の過去を描いた「春に翔ぶ」
櫂を担当した漫画と小説の2人の編集者を描いた「星を編む」
北原先生と暁海のその後を描いた「波を渡る」
の3つの中編が収録されています。

凪良ゆうさんはここ数年の私のイチオシの作家さんで。
『流浪の月』『滅びの前のシャングリラ』『汝、星のごとく』全て傑作。
とにかく文章が上手いし、感情描写が素晴らしい。

が、本作は私はあまり好きになれなかった。
いつも通り文章は素晴らしいのだけど。
自分の負の部分に気付かされてしまいました。

私は何度も書いていますが、「フランダースの犬」「火垂るの墓」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が苦手で。
善良な人々が不幸になる話が震える程嫌なんだけど。

北原先生の過去の話を読んで気付いた。
私は彼らを善良ではなく愚かだと思っているのかも。
何でそんなことしちゃうの!?と彼らの選択がたまらなく嫌なんだと思う。

という訳で、北原先生の過去の選択、私は好きではなかった。
私はこれに感動出来ない。
私は優しくないんだと思う。でもそれで良い。
私は品があって公正な人間でありたいと思っているけど、優しいと思われたいとは思っていない。

amazonの商品ページはこちらから
https://amzn.to/3V0q1m7

素晴らしかった。
第何世代と言えばよいのか分からないのですが、今最も勢いがあるのが、凪良ゆうさんと一穂ミチさんではないでしょうか。

瀬戸内の島に育った暁美と、男にだらしない母親に振り回され島に引っ越してきた櫂。
高校生の二人が出会い、付き合い始める。

櫂は漫画家(原作者)を目指し、高校卒業後に上京。
暁美も東京の大学に進学したかったのだけど、母親を一人にできず、島に残る。
櫂がブレイクし、お金を持ち始め、徐々に二人はすれ違っていく。

暁美の母親も、櫂の母親も、大人なのに自立出来ていないんですね。
暁美の母親は、他に女を作って家を出て行った夫にすがりついている。
櫂の母親は、ヒモ男を作っては裏切られて捨てられる。

if なんて無いのだけど。
もし暁美が東京の大学に行っていれば…。
でも残ることを選んだのは自分で、誰のせいにもできないのです。

凪良節炸裂です。

誰かに幸せにしてもらおうとなんて思うから駄目になる。
自分で勝手に幸せになれ。自分は自分を裏切らない。

いざってときは誰に罵られようが切り捨てる、もしくは誰に恨まれようが手に入れる。
そういう覚悟がないと、人生はどんどん複雑になっていくわよ。

お金で買えないものはある、でもお金があるから自由でいられることもある。
たとえば誰かに依存しなくていい。いやいや誰かに従わなくていい。

いくつかあった選択肢の中から『今』を選んだのはわたしだ。
それが間違いだったならば、間違えたのはわたしだ。誰のせいにもできない。


母親を一人にできないって、よく聞くけど、それって完全に思い込みだと思う。
だって、母親は大人なのだから。
子供のあなたが母親を支えられるなら、大人の母親は自分で自分を支えらえるよ。
もし独身だったら、一人で生きて行かねばならないのだからさ。

暁美は、櫂に振られたくなくて、浮気も目をつぶり、様々なことを我慢します。
そうして気付くのです。
自分があんな風にはなるまいと思っていた母親と同じことをしていることに。

そして決意します。

恋愛小説だけど、母の呪縛や、女性の自立など、様々なテーマが込められていて、とても濃い。

自分の今は自分の選択の結果で、自分の人生を誰のせいにも出来ない。
本当にそう思います。



『流浪の月』で本屋大賞を受賞された凪良さんの小説。
凪良さんの小説を読むのはこれで3作目なのですが、やはり私は彼女の文章のトーンが好きだわ。

マンションの屋上にある庭を舞台にした連作短編集です。

高校生の時に恋人を亡くした30代の女性。
ゲイであることで友人や両親に縁を切られてきた30代の男性。
仕事が原因で鬱になり、無職で実家に身を寄せる20代の男性。
など、生きづらさを抱えた人たちが主人公です。

劇的な救いや逆転はありませんが、それでも生きていく、というテーマが良いです。

私は人生なんて辛くて当たり前だと思っているので、壺を買って救われようという魂胆が気に入らない。
同様にパワーストーンいっぱい付けている人も苦手。
え?そんなに自分だけ助かりたい??と思ってしまう。


『流浪の月』で本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの受賞後第1作です。
『流浪の月』も素晴らしかったけど、本作も負けず劣らずの傑作でした。

〈一か月後に小惑星が地球に衝突し、人類はほぼ絶滅する。〉

人生をうまく生きられなかった4人を主人公とする連作小説です。

凪良さんの文章のトーンは天性のものなのでしょうね。
テクニック的に上手いとかそういうものを超えている気がする。

この4人の人選が素晴らしいので、予備知識なく読むことを勧めます。
1人目と2人目の繋がりが分かった時に静かな興奮が込み上げてきましたし、4人目はそうきたか!と。

人って、見えている姿と心情は異なるものなんだろうな。

「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。
なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」

私は生き急いでいる的なことを言われることがあるのですが、家庭の事情もあり、潜在的にどこかで、私は明日死ぬかもしれないと思って生きているのだと思う。

長く生きられれば良いってものじゃないと思うし、日本人の〈洞穴の中ででもいいから1日でも長生きしたい〉的な思想は理解できない。(コロナ禍で顕著になったと思う。)

知らなかった作家さんで、本作が売れているのは知っていて、2020年度本屋大賞も受賞。
私、本屋大賞に限らず芥川賞も直木賞も興味無いので(年に数冊しか読まない人はそれらを参考にするかもしれませんが、私は一日一冊くらい読んでいるので、むしろ私が選んでやる的な上から目線)、これを書くために調べて受賞を知った次第。

が、本作はとても良かった。

お父さんが病死し、お母さんは恋人を作って消え、引き取られた叔母夫婦宅で中学生の息子から性的いやがらせを受け、居場所が無く、学校が終わっても公園で時間を潰す小学生の更紗。公園には同じく時間を潰している文という大学生がいて、ある日、文は更紗にうちに来る?と声を掛けます。
更紗は文の家が居心地がよく、両親がいなくなって以降、初めてちゃんと眠れる。
更紗を助けてくれたのは文だけだった。
でもそれは誘拐ということになり、文は捕まってしまう。

それから時が過ぎ、更紗は大人の女性となって、文と再会してしまいます。

文は更紗におかしなことは一つもしなかった。
おかしなことをしたのは叔母の息子なのだ。
でも世間は誰も信じてくれず、更紗を腫物として扱う。
二人の関係を認めてくれる人は世界中に一人もいない。

確かに更紗の行動にはかなりイライラさせられます。
DVの彼氏から逃げるのですが、アルバイト先を変えないので、もちろんすぐに住んでいる所もバレてしまいます。
バカなの?と思います。

ですが、文章がとても良い。
文体も心理描写も上手いなぁと思う。
そして構成も良い。

後半、えー!そういうことだったの!と見ていた景色がガラリと変わります。

更紗と文の関係が〈恋愛〉ではないのも良いです。
そういう次元を超えた、世界中で一緒に生きて行けるのはこの人しかいない感。

映像化すると気持ち悪い感じになりそうだから、しないで欲しいなぁ。

このページのトップヘ