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カテゴリ:本(日本人作家) > 天童荒太

土手で発見された男性の遺体には性的暴行の痕があり、「目には目を」というメッセージが残されていた。
被害者の息子は、3年前に起きた集団レイプ事件の加害者だった・・・。

うーん・・・
天童さんの作品は全て読んでいるのですが、これはちょっと、とっちらかっているな。

昔気質の刑事とイマドキの若者刑事のバディものでもあり、要素が多すぎて、何が伝えたいのか見えにくくなっていると思う。

若者刑事(このキャラクターは魅力的で私はかなり好みだった)の言葉が良かったな。
私も夫のことを主人と呼ぶ人に違和感があるんだよね。
私の主人は私自身だもの。
専業主婦だからとか関係無いと思うよ。

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表紙のほのぼのさに反し、ガツンとやられる2編が収録されています。

児童虐待をテーマにした表題作の『迷子のままで』
被災地で除染作業に従事する若者達の一夜を描いた『いまから帰ります』

書き下ろしではないから、偶然でしょうが、2編に通じるものを感じました。

『いまから帰ります』に強烈なインパクトを残す文章がありました。

「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。


『迷子のままで』で、再婚相手に息子を殺された母親が、取調室で女性刑事にこう言います。
「あんたらは、わたしのせいだと思うんでしょ。宏クンのせいだと思うんでしょ。でもさぁ、わたしらだって、あんたたちみたいに生きたかったよ。宏クンだって、あんたみたいな女の旦那になりたいよ…わたしだって、あんたの旦那の奥さんになりたいよ…でも無理なんだ、無理なようになってんだよ。それがわかんないでしょ?」

この母親は、つまり、おそらく今後も何度でもだまされるということです。
思考力を失い、無気力、無自覚、無反省、無責任だから。

でも本人も「無理なようになってんだよ」と言っていますが、
この世には、高校を卒業してても掛け算割り算も出来ない、アルファベットすら覚えられずにきた、環境に恵まれなかった人が山ほどいる(天童さんがインタビューで仰っていた)訳で、こういった状況から子供が被害者にならないようにするには、どうすればよいのだろう。

道後温泉の旅館「さぎのや」は、お遍路さんだけでなく、行く場所や帰る場所のない傷ついた者たちも受け入れてくれる。

的な温かい話なのですが。

主人公の雛歩という少女が、15歳なのにあまりにものを知らず、言い間違えも多く、私は途中までパラレルワールドかファンタジーなのかと思っていた。

例えば、エイリアンとベジタリアン、ホスピスとカルピス、かいかぷりと猫かぶり、自首と自習。
こういう言い間違いが頻繁に出てきて、さすがに白けるというかイラっとするというか。

家庭環境が複雑で勉強に集中できなかったという設定なのですが、いやでもこんな15歳いないでしょ。。。


天童さんの著作は全て読んでいるのですが、今回ほど、読み進まないものはなかった。
難解だし、共感できないし、とにかく面白くない。
途中、何度も挫折しかけ、私にしては珍しく上下巻読むのに1週間もかかってしまった。


ペインクリニックに勤務する医者の万浬は、実は生まれつき心に痛みを感じたことが無い。
そんな万浬が、クリニックで、海外でテロに巻き込まれ、その時の怪我が原因で肉体的な痛みを感じることができなくなった森悟に出会う。


心に痛みを感じない人間
肉体に痛みを感じない人間
心に痛みを感じない人間を作ろうとする人間
様々な人が登場します。


冒頭がかなりの読みにくさなのですが、万浬の祖母や万浬の患者の視点で描かれた章はストーリーがそれなりにあり、やっと回転してきたか…と。

でもまぁ、お薦めはしません。

いま話題の山本周五郎賞受賞作です。
文庫改訂版の全5巻を読みました!
こんな暗い小説をモーリシャスのビーチで一気読み・・・。

主な登場人物は3人。

東京都児童センター職員の氷崎游子。
アル中の父親を持つ少女・玲子を気にかけている。

警視庁の警部補である馬見原光毅。
厳しく育て過ぎた息子が事故か自殺か判断のつかない死を遂げている。
そのことで家族が崩壊寸前なのに、他人の母子の心配ばかりしている。

私立高校の美術教師である巣藤浚介。
あまりに禁欲的な両親に育てられ、親子断絶している。
絵の才能がある不登校の生徒・亜衣を気にかけている。

この3人に、連続して起きている「引きこもりの子供が両親を殺害し自殺するという事件」が絡んでいきます。

天童さんは、当時もてはやされていた「家族にかえろう」へのアンチテーゼとして執筆されたそうです。様々な家族間の問題を解決せずに「家族にかえろう」なんて言ったら、結局、子供に皺寄せがいってしまうと思っていたようです。

観なかったけれど、TBSはよく本作をドラマ化しようと決意したなぁと思うくらい、重いテーマです。

天童さんの、天童さん名でのデビュー作です。

一人暮らしの女性を拉致監禁した末に滅多刺しにして捨てるという猟奇連続殺人事件が起きている。
その犯人と、女性刑事、彼女の行きつけのコンビニ店員。
この3人の目線で描かれ、ストーリーが交錯し、収束していきます。

犯人は完全にサイコパスですが、読者的には最初から犯人が分かってしまうので、犯人は誰か?という謎解きではなく、「志村後ろ!」的なハラハラドキドキ感ですね。

更に、天童さんが描きたかったテーマは、サイコスリラーではなく、タイトルにもある通り「孤独」ということなのだと。

3人とも、過去にトラウマがあり、孤独であるという共通項があります。
女性刑事の「結局、どうなっても、ひとりだから」という台詞に共感しました。
一人が寂しいから誰かと付き合う、結婚するというのは、違うと思っていて。
恋人がいても、結婚しても、人間は孤独を抱えて生きていくものだと思うのです。

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