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カテゴリ:本(日本人作家) > 本谷有希子

本谷さんのお芝居は一時期かなり観に行きました。
原作の映画も観ていますし、著作も全て読んでおります。

本作は2つの中編が収録されています。

『椎子のデフォルト』
身体に超小型電子機器をいくつも埋め込み、24時間オンラインでいることが普通となっているという近未来が舞台。
学校では漢字の書き取りも計算も習わなくなり、膨大なデータから取捨選択する能力が問われる世の中になっていると。
なるほど、確かにそうなるかもなと思った。
もう語学の勉強も必要ないかもね。耳に埋め込む式の自動翻訳機が登場しそう。

『マイイベント』
主人公の渇幸という男が嫌な奴で。
50年に1度の大雨がやってくるということで、コンビニは全て売り切れ。
渇幸は既にホームセンターで買い占め、膨大な備蓄があるのに、わざわざコンビニに覗きに行き、必要でもないのに、他に欲しい人がいるからこそ、最後の1個のゼリー飲料を買い占めるような奴で。
でもラストは非常に後味が悪かった。ここまでされるほど悪い奴ではないよね。読みたくなかったと思うくらい。

SNS、ネットショッピング、動画撮影。
スマホに依存する中年の男女を描いた3つの中篇が収められています。

1話目のSNS依存の話が一番印象に残りました。
専門学校の同級生である40代の男女3人が、LCCでクアラルンプールに(貧乏)旅行に行くのですが、ひたすら写真や動画を撮ってSNSにアップ。もはやSNSにアップするために旅行にいっている。

屋台で食べた料理に対し、主人公のハネケンは内心こう思っています。
正直、ここが日本だったらどれもお金を払う気にもなれないような料理ばかりだ。
だけど、そんなことはどうでもいいんだ。
僕が本当はどう感じたかなんて、たいしたことではないのだ。
大切なのは、料理が美味しそうなこと。
旅が楽しそうなこと。
僕らが幸せそうなことなんだ。


本谷さんは、痛い人たちを描かせたらピカイチ。
読んでいて彼らを嘲笑う気持ちになるというよりは、痛々しくて見ていられなくなる感じ。

芥川賞受賞作です。
やはり私は芥川賞とは合わないんだろうなぁ。

本谷さんの小説(戯曲も)は全て読んでおり、人間の悪意を描くのが上手だなと思っているのですが、本作はファンタジーも入っており、ピントがどこに合っているのか分かりませんでした。

結婚して4年目の夫婦の話です。
ある日、旦那と自分の顔がそっくりになってきていることに気付き、妻はゾッとします。

確かに、夫婦って似てくると聞きますよね。
顔の造作が似てくるというより、表情や雰囲気が似てくるのだろうけど。

私は時々、目の前にいる夫が、「自分とは違うことを考えている別の人間だ」ということにハッとすることがあります。
(当たり前なんだけど。でもこのニュアンス、夫婦やっている人にはわかるでしょう!?)

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