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タグ:桂望実

中小企業診断士・北川が悩める経営者を導く ”会社の終活”エンタメ小説。

二人の息子のどちらかに会社を継がせたい、洋菓子店の二代目社長。
社内に目ぼしい人材がいないとボヤく、ワンマンバッグメーカー社長。
社長の急な逝去により外国人オーナーのもとで働くこととなった、刃物メーカー社員。
という3つの中編が収録されています。

ちょっと予定調和な展開ではあるけれど、面白かったです。
北川のアイデアが素晴らしいのですよね。
つまり、作者の桂さんが凄いということ。
桂さんの小説を読むと、桂さんのアイデアに感心することが多く、桂さんならどんな仕事に就いても成功するのではないかと思う。

・・・すみません。
私、子供の頃から先生に本当に読んでいるの?と疑われるくらい、本を読むのが速く。
最近、読書ブログみたいになってますね・・・。

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何かに追われるように引っ越しを繰り返し、パチンコ景品交換所、連れ込み宿の清掃、総菜屋、訪問介護と仕事を変える麻里。
仕事ぶりはいたって真面目で、雇い主からも気に入られている。
一体彼女が何から逃げているのかが、徐々にわかってきます。

一人息子の岳が14歳の時に、中学生を2人殺したんですね。
(実はその前にもう1人殺しており、それが衝撃なのですが・・・。)
岳は少年刑務所に入っているのですが、マスコミが麻里のことも追いかけてくるため、職場にバレ、辞めざるを得なくなるのです。
親の責任、親の躾が悪い、だから親も一生責められるべきと嫌がらせを受け続けています。

でも麻里は、岳が6歳の頃から、この子はおかしいと気付いていて、夫や色々な専門家に相談しているのです。でもみんな、気にし過ぎと言って、取り合ってくれなかった。

岳は完全に生まれついてのサイコパスで、幼稚園の頃から、周りを支配しコントロールしてきたのです。少年刑務所でも同じで、リーダーになり、弁護士や刑務所の所長たちも騙せちゃうんです。
で、出所することになっちゃいます。

でもってやっぱり少年刑務所に9年入っていても、何も更生されていなかったのですよ。
生まれついてのサイコパスだから更生しようがないんです。
そういう人間はいるんです。

麻里だけが、岳のおそろしさを分かっている。
もうこの子の母親をやめたい・・・。

いやぁ、恐ろしい話でした。
自分だったらどうするだろう・・・。

なお、私はだから子供要らないんですよね・・・。
自分の子供が犯罪者になる可能性は0%だと言い切れる人いますか?
いるとしたら、そういう人ほど危ないと私は思うよ。
私は0.1%でも可能性があるなら、リスクを取りたくないんです。
もちろん我が子が羽生結弦や大谷翔平になる可能性も0ではないですが、私は常にリスクヘッジを優先して生きて行きたい。


何十年も会っていなかった弟。
あることをきっかけに疎遠になってしまった大学の友人。
突然失踪した夫。
かつてお世話になっていた勤め先の社長。

遺産相続や借金返済などそれぞれ理由があり、主人公は行方不明者捜索協会の手を借り、行方を追います。

正直、一人も救いは無く、ホームレスになって病死していたり自殺していたりします。
基本的には、もっと自分に何か出来たのではないかと主人公は自分を責めます。

1話だけ例外があり、それが逆に良かったです。
突然夫が失踪し、周囲にもう諦めたらと言われながらも、籍を抜かず待ち続けた主人公。
だが10年目にして夫の遺体が発見され、自殺だったと判明する。
主人公は夫に何があったのか辿るのですが、これが全く美談ではない。
夫は最低の人間で、プライドが高くて仕事ができず、後輩の手柄を横取りし、しまいには社内不倫がバレて左遷。それを知られたくなくて自殺したという・・・。
同僚に奥さんどんな人ですか?と訊かれ、「S女子大卒」と真っ先に答えるような人間。

主人公は目が覚めます。
夫がそんな人だとは知らなかった、ではなく、知っていたけど気付かない振りをしてきたことに。
それを認めると、そんな人と結婚したという自分の選択が、間違いだったということになってしまうから。

色々と考えさせられるテーマではありましたが、桂さんの一番伝えたかったことは、あまりピンと来なかった。

残された方には、亡くなった方の物語が必要だとお話しさせて頂きましたが、その物語は真実だけで作る必要はないと思っています。想像や願望が入っていてもいいと私は思っているんです。

人は色々な面があるから、どこの面を見るのかは、主観が入っても良いと思うんです。
でもわざわざ想像や願望で物語を作る必要あるかなぁ。


40歳以上限定の結婚情報サービス会社で働く婚活界のレジェンド・桐生恭子。
恭子の発案で、大邸宅M屋敷に交際中の会員を一緒に生活させる「プレ夫婦生活」プランがスタートする。

色々なケースを見ていくうちに、恭子にも変化が生じ、成婚率にも影響が出てきます。

林真理子さんの中島ハルコシリーズを彷彿させます。
深みはないですが読みやすいので、普段あまり本を読まない人には取っつきやすいかと思います。

私は結婚してもしなくてもどっちでも良いと思っているのですが、絶対に結婚したいけど(自分勝手に決めた条件を)妥協もしたくない、という考えには賛同できません。
あなたはそんなに完璧なのですか?と言いたくなる。
これらの条件を1つも譲れない!ということなら、妥協するくらいなら結婚しなくても良いという覚悟?が必要かと思います。

人生はオーディションの連続である。
辛くても嫌でも逃げられない。

なるほどなぁと思いました。
オーディションとは何も芸能人だけではなく、普通の人の日常に溢れている。
例えば就職活動、結婚。
相手に選ばれるかどうか、合格出来るかどうか、それはつまりオーディションであると。

本作は主人公・渡辺展子さんの半生が描かれています。
森絵都さんの『みかづき』を彷彿させます。

受験、結婚、就職、出産、子育て。
ネタバレになるともったいないのであまり書きませんが、人生って本当に色々ありますよね。

私は早く今年が終わって欲しいです。
早く定年して老後を迎えたいと思う日曜の深夜。。。


 

様々な境遇に身を置く人生後半戦のおじさん達が社交ダンスに挑戦する話。

定年後に何か運動をと思って始めた人もいれば、出世レースに敗れた商社マンや後継者の息子に手を焼く工場経営者も。
そして妻を亡くしてから無気力な講師の米山。

ありがちなストーリー展開ですが、感情移入しました。
印象的だったくだりを抜粋。

望み通りの人生だと胸を張って言える人は、一人もいないんじゃないでしょうか。
皆、したくもない体験をしてきたんですよ。
生きるとはそういうもんですから。
辛くても、しんどくても、歩いて来たんです。でこぼこ道を。
お迎えが来るまでは、これからも歩いていかなくちゃなりません。

私もしんどいです。
だからたくさん趣味を持たないと耐えられない。

1979年から2017年まで。
ある一家の40年間を長男・守の視点で描いた小説です。

守が小学6年生の時に、看護師でしっかり者の母親が、ギャンブル好きの父親を見限り、離婚。
父親は守の姉を連れて家を出ます。
なぜ、姉を連れて行ったか。それは姉が将棋の天才で、父親は彼女に賭け将棋をやらせ、そのお金で暮らしていくのですね。
こう書くと最低な父親なのですが、姉は好きな将棋ができればそれで良いという変わり者だし、しっかり者の母親が苦手で、父親といる方が楽だと思っているのです。
そして父親も悪い人ではない。父も姉も、毎日きちんと学校に行き、ルールを守って生きている守のことを心から偉いと思っています。

守は非常識な二人を軽蔑しながらも、どこかで二人を、特に将棋という才能を持つ姉を羨ましく思っている。自分には何も無い、自分は平凡な人間だと思っています。

が、誰だって、その人の人生の主人公なんですよね。
守がそれに気付いていく、成長譚でもあります。
タイトルは、将棋で「歩」が成ると「金」になることを指しているのだと。

そんなにページ数は多くないですが、なかなか奥深い小説だと思いました。



35歳独身で30㎡のアパートに住み貯金ゼロのフリーライターの飯塚桃子は、他の誰もが断られてきた、小倉京子の独占インタビューを取りつけることに成功する。
一発逆転を狙って、世間の注目を集めている事件のノンフィクションを書こうと目論むが・・・。

2004年に小倉夫妻の一人娘である6歳の沙恵が行方不明になります。
それから12年後。
桃子は沙恵の母親である小倉京子に独占インタビューに応じてもらえることになり、さらに京子の元夫である
吾、慎吾の両親、沙恵の担任教師、京子の姉、子を失った親の会の主宰者などにインタビューを行うのですが。

これ、タイトルと表紙がストーリーに合っていないと思います。
えー、こういう話だったの!?と意外な方向に進んでいき、ラストにも驚き。

ネタバレになっちゃうと面白くないと思いますので、詳細は控えますが、もっと小さな話かと思っていたら、案外グローバル(?)な展開になっていき、その社会派な部分も心に残りました。

諦めない女とは、沙恵の生存を信じ続けてきた京子でもあり、難しいインタビューを敢行していく桃子でもあります。

売り上げが落ち込んでいる中堅の「フィデルホテル」に、投資ファンドが元山という新社長を送り込んできた。
社会心理学の教授だったという異色の経歴の元山が打ち出したのは、落選すれば解雇もやむなしの「従業員総選挙」で・・・。

この従業員総選挙は、例えば、フロント職に就いている者がフロント職で立候補していても、投票者はその人を他の職種で選ぶことが出来るというシステム。

本人は花の仕事がしたいと思っていても、客観的にはそれほどセンスが無く、それよりもコミュニケーション能力が高いことを評価され、フロント職に選ばれるとか。
やる気はないけれどイケメンの調理師が、フロント職に選ばれ、女性客の心をつかんでいったりとか。

自分がやりたい仕事と、客観的に向いている仕事は違うことがある、というのが面白かったです。

社会心理学の教授だったという設定、もう少しうまく活かせられたのでは?とは思いましたが。


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