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タグ:白石一文

白石さんは一貫して同じテーマを書き続けていると私は思っており、本作も同様。
人間にとって最も重要なのは、お金でも地位でも無く、魂が繋がっている相手である。

今回は不倫ではなく、バツイチの50代男性と、夫を亡くしている40代女性の物語です。
年齢を高めにしたのは、恋愛と結婚がイコールではないように描くためとのこと。
白石さんは、結婚は〈子孫を残す生殖活動〉と切り離せず、その行為自体には物語がないと考えているそうです。書きながら、恋愛は40歳を過ぎてからするものだという思いを強くしたとのこと。

私も基本は同じ考えで、なので白石さんの小説が好きなのですが、とは言え、そのような太い絆を築けない人もいると思うのですよね。そういう人は人生に絶望しなければならないのか?と訊かれたら、そうではないと。多分、ベターハーフ(魂の片割れ)なんて、見付からないことの方が多いと思うのですよ。だからこそ、もし見つかったら、相手や自分が結婚しているとか関係ない、ということなのだろうなと。

いま結婚している人に、相手と魂で繋がっているか?と訊いたら、どれくらいの人がそうだと答えるだろうか…。

私、白石さんは好きな作家の一人で、最近も『松雪先生は空を飛んだ』を絶賛したばかりですが、本作はお薦めしにくいです。
池井戸さんとか好きな人には本質が理解できないと思う…。
ファンの方は止めませんが、白石さん初心者は〈触るな危険〉です…。

49歳の旭と73歳の二階堂さん。
二人のある意味究極の身勝手な男女が登場します。

身勝手と言っても、ポイ捨てするとか順番を守らないとか、そういう日常の非常識さとは違う、人間の奥底の究極の身勝手さと言うか。

二階堂さんは旭とある契約をするのですが、ラスト4ページ、ひえーとなりました。

人は何のために生きるか、ということなのかな。

私はブログのタイトル通り、趣味の為なんですが。
私は常識的な人間だと思いますが、自分にとって一番大切なのは海外に行くことで、もし海外に行くなら家族には二度と会えないという究極の選択を突き付けられたら、海外を選ぶと思う。
そういう意味では、私も旭や二階堂さんと同じく、究極の身勝手さを持つ人間かもしれない。


面白かったー!
上下巻あるのですが、一気読みです。

白石さんは好きな作家の一人で著作全て読んでいるのですが、一時期、もはや小説というより哲学書みたいになっていたのですが、最近はエンタメ色復活しつつも、哲学的なテーマもあって、バランスが良くなりました。

本作は白石さんの新たな到達点となる作品だと思います。

松雪功志郎先生の私塾「高麗塾」で最終講和を受けた8人&その周囲の人々の群像連作ものなのですが、複雑な人間関係が見事に収束していく様(人物相関図欲しい)は、どうやってこれを書いたのだろう、どこから書いたのだろう、最初に全ての構想があったのだろうか、と驚愕します。
白石さんの頭の中、どうなっているんだ!?

こんな偶然ある?と思う人もいるかもしれませんが、これは偶然ではなく必然ですよ。
起点はどこからか、ということですよ。

個人的にはラスト(なぜ松雪先生はこんなことをしたのか)がちょっと腑に落ちないですが。

白石さんがこの段階でこんな傑作を新たに生み出すとは。
東野さんも、頑張って…。

546ページ!長い!でも面白い!!

白石一文さんも好きな作家の一人で、著作全て読んでいるのですが、最近は小説というより哲学書みたいになっているなと思っていましたが、本作はエンタメ寄りなので、万人にお薦めします。長いけど。

大学生だった娘が交通事故死して以来、妻は精神に不調をきたし、二度目の自殺未遂をおこす。
男は娘を助ける為、40年振りにあれを試すが・・・。

タイムリープものです。
でもその設定以外が非常に現実的な話なので、荒唐無稽なSF感は無いです。

結局、娘は助かるのだけど、娘が16歳も年上の男と付き合っていて10代で妊娠した上に堕胎していたこと、妻が長年不倫していたことが判明し、家族はバラバラに。

皮肉だね。。。

結局、どんな人生でも不幸の総量は変わらないということなのでしょうね。

その上で、この世界の仕組み的な白石節も炸裂しています。
その辺は一言で説明できないので、是非読んでみてください。


いやぁ凄い本だった。
こんなトンデモナイ小説、新人にはとても書けないだろう。
確固たる地位を確立した白石さんだからこそ新潮社も好きなように書かせたんだろう。
それくらい、自由すぎる小説です。

621ページ!分厚くて持ち歩くには思いから、お風呂の中で毎晩100ページずつ読みました。

ある意味、叙述トリックみたいで、え!時代設定って近未来なの!?え!この人は男だったの!?と途中で何度か驚きつつ。

新宿二丁目に隕石が落ち、グラウンドゼロに建てられたファウンテンシティ。
そのメインとなるタワーマンション〈ブルータワー〉では、外国人の不審死が続いていた。

アメリカ、中国に続く三番目の経済大国がインドになっているという近未来設定。
色々書くと荒唐無稽なSFみたいに思われるからこれくらいで。

でも、根底は変わっていないと感じました。
白石さんのインタビューがすごいのよ。

男と女はもう駄目だろうという気がする。
この『ファウンテンブルーの魔人たち』という小説はそうした私の基本認識を土台にして書かれたものだ。
子供の頃から私は男女というものが苦手で、好きではなかった。なかでも男の方がより嫌いだったので世間的には“女好き”のように見られたが、実は女性もそれほど好きだったわけではない。
矛盾するような話だが、しかし、私は人間のことは大好きだった。ただ、私の好きな人間というのは、私と直接的な関わりを持たないか、深い関わりを持たない相手で、彼らは活字やニュースの世界、またはちょっと離れた場所に生息していなくてはならないのだった。
そういう人たちのことを私は長年、念入りに観察しながら生きてきた。そして、最近に至って得たのが、冒頭に記した、「男と女はもう駄目だろう」という認識なのである。
世界大戦やベトナム戦争、イラク戦争が終わり、米ソ冷戦も終結したいま、新しい戦争がこの世界を覆い尽くそうとしているかに見える。
男と女の戦争だ。

小説は、ブルータワーに住む作家の前沢の視点で描かれていくのですが、前沢と白石さんが重なります。
前沢の「わたしという物書きが徐々に社会や人間に対する好奇心を失い、いまやこの世界全体の成り立ちや構造にのみ目を向けざるを得なくなっている」とうのも、まさに白石さん自身のことではないかと。

万人受けする作家さんではないと思いますが、私は白石一文さんの小説がとても好きです。
ストーリー云々はもうどうでも良い。(とは言え、ストーリーも面白いのですが。)
小説というより、哲学書というか、人生とは、生きることとは、ということを考えさせられます。

47歳の名香子は、ある日、夫の良治に付き合ってもらいたい場所があると言われる。
そこは都立がんセンターで、良治は初期の肺がんと宣告される。
病院の帰り、ランチに寄ったレストランで、良治は名香子に大事な話があると切り出す…。

肺がん以上に大事な話って何よって、名香子も読者の私も思う訳ですよ。

そしたら、な、なんと!
「好きな人がいるから、これからは彼女と一緒に生きて行きたい」と告げるんですよ。

二人は不仲だった訳ではないのですね。
良治も、「なかちゃんのことが嫌いになった訳ではない。彼女の方がなかちゃんより何倍も好きになってしまった」という訳。

これはキツイ…。
私だったらどうするだろうか…。

とは言え、白石さんなので、テーマは別にこの二人がどうするかではないんですね。
まぁ白石さんにしては、わりとスタンダードな小説になっているとは思うけれど。

なんというか、もっと、運命論的な話です。

死ぬかもしれない人間が、最後に好きなように生きたいという気持ちは分かる。
ミクロでは、一つ一つの選択が未来を作るのだと思う。
でもマクロでは、どんな人生を選んでも最終的には大差無い気がする。

どんな人生でも、楽しい日もあれば辛い日もあるということもあるけれど、もっと身も蓋もない言い方をすると、結局、人間は生まれて死ぬだけだと思うから。
地球上の、過去そして未来の人類全てから見たら、一人一人の人生なんて些末なもので、大差無い。
だからジタバタしても意味がないし、なるようにしかならないし、どんな風になっても大差無い。
そう思うと、逆に楽になりませんか? 

白石さんの自伝だよね!?という小説。
登場する出版社は、新潮社と文藝春秋を入れ替えているなと思いますが、白石さん自身が文藝春秋に勤めていたので、諸々配慮でしょう。
登場する編集者達もイニシャルや仮名になっていますが、きっとあの方ではないかな?と思い浮かべながら読みました。

白石さんの著作は全て読んでおります。
最近特にその傾向がありますが、小説というより、哲学書のよう。

人は何のために生きて行くのか?

白石さんの小説は一貫してこのテーマを描いていて、私なりの解釈では、「世界でたった一人の運命の人と生涯を共にする」ということなのだなと。
白石さんは過去の著作で、「最も大事なことは、この人が運命の相手だと決断することだ。そう決める覚悟を持ったときに、初めてその相手は真実の運命の人になるんだと思う」とも書いています。

そして白石さんの著作は一貫して、不倫にも肯定的。
運命の人はたった一人しかいないから、結婚しているかどうかは関係ない。

同じく白石さんの愛読者である友人と、「白石さんの奥さんはどう思っているんだろうね」とよく話していたのですが、もし本作がほぼ自伝であるならば、奥さんとは20年も別居していて(離婚に応じてくれない)、白石さん自身はたった一人の運命の人と暮らしている(別居後に出会っている)のだろうな。
それがタイトルの『君がいないと小説は書けない』ということなんですね。

白石さんの著作は全て読んでおり、基本的には好きな作家さんです。
池井戸さんや東野さんとは対極にいる作家さんで、ストーリー性や起承転結を重視していません。
私が小説に対して最も重きを置いているのは、“言葉にすることが難しい人間の感情というものを表現すること”なので、もはや哲学書のような白石さんの小説は好きです。

が、ここまで来るとなぁ。

妻の死後、作家の姫野伸昌は酒浸りになっていた。
ある日、体の一部がプラスチック化し、脱落し始め…。

プラスチック化と共に、姫野は自分の記憶がことごとく事実と違っていることに気付き、真実を追い始めるという話なのですが、もはやファンタジー?
こんなに長いのに、正直、何を伝えたいのか伝わらず。

白石さんの著作は全て読んでいます。
ストーリーが好きというより、根底に流れているテーマが好きなのです。

なのですが、今回は物足りなかった。
ものすごく長い(541ページ)のに、突き刺さるテーマを感じず。

連れ添って20年の妻に巨額の隠し資産があることが発覚。
リストラされた時、母親が病気になった時、息子が学費の問題で医学部受験を諦めた時。
なぜ妻はその金を出してくれなかったのか?

うーん。
白石さんにはやはり、ストーリー展開を重視するよりも、哲学的な小説を書き続けていってもらいたいです。





白石さんと百田さんて真逆の作家さんだよなぁと思うの。

白石さんは全くマーケティングしない。
書かないと窒息しちゃうんだろうな。

それにしても、本作、いつも以上に好き放題書いている!
白石さんご本人も作家人生を賭けた作品と仰っています。

白石さんは一貫して、「人と人との繋がりの神秘さ」みたいなことをテーマにされてきましたが、本作は人という単位どころか、人類とか世界とかそういうスケール。

世界的ベストセラー作家の兄の謎の死。
その真相を解明しようとする弟の話が第一部。

なんですが、第一部のラストがえーー!?という感じなのです。
物語のお約束というか、読み手の安心感みたいなものを思いっきり裏切ります。
え、二部と三部はどういう話になるの?と途方に暮れます。

そして二部は更に謎が謎を呼び、三部で収束するのですが、むしろ白石さんが教祖になれるんじゃと思うよ。

スピリチュアルが苦手な人には薦めません。
私は漠然と運命とかあるよなぁと思っているので、白石本はしっくりきます。

世界は見えざる大きな力で動いている。
言葉がネガティブだけど、この世は仕組まれている。
そういう内容です。

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