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タグ:辻村深月

うん。良い話だと思う。

茨城県に住む天文部の女子高生・亜紗。
渋谷の公立中学で学年唯一の男子になってしまった真宙。
県外のお客さんを受け入れているということで、友人に距離を置かれてしまった、五島列島の旅館の娘である女子高生・円華。
そして彼らの周囲の子供達。

彼らがリモートで繋がり、遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」に参加していくお話です。

良い話なのだけど、良い話過ぎて、何も引っかからなかったなぁ。
先ほどアップした『卒業生には向かない真実』と真逆で、こちらは完全にジュニア小説という印象。

前も書いたけど、私は2000年という就職氷河期のピーク(2000~2003年頃)に社会人になりましたから。そっちの方が大変と言いたい訳ではなく、その時代その時代で、それぞれの苦労があるということ。
辻村さんの本作、その点では共感。
コロナで奪われたものもあれば、与えられたものもある。
彼等を可哀想な子供達と第三者が呼ぶのは傲慢。

詐欺をめぐる3篇が収録されています。

ロマンス詐欺の片棒を担いでしまった大学生。
息子の中学受験の際に紹介料を払ってしまった主婦。
有名漫画家のふりをしてオンラインサロンを開催してしまった、子供部屋おばさん。

騙す人、騙される人。
どれも意外な展開で、辻村さんは巧いなぁと思います。

それにしても。
ロマンス詐欺は私にもFacebookのメッセンジャーに来ますけど、あれに騙される人って本当に謎。


面白かったー。
タイトルは「ヤミハラ」と読みまして、闇ハラスメントということであります。

「身近な、あの名前のない悪意や善意、あの距離感や関係性に名前をつけました」とのこと。

辻村さんがサイコホラーを書くとは。
どんだけ引き出し多いんだと驚きました。

色々なバリエーションの闇ハラが出てくるのですが、どれもこれも、絶妙。
正論が人を追い詰めたり、親切が人を追い詰めたり、受容が人をダメにしたり。
本当に上手いなぁと思います。

短編集なのだけど、共通軸がありまして、それが分かった時に更にゾッとするという。

黒沢清監督が映画化したら面白いと思うんだよなぁ。
でもタイトルは「THE FAMILY」の方が良いかなと。
でもってポスターは、「パラサイト」の目線入った家族写真のイメージ。

私も最近、「ミザリー」のキャシー・ベイツみたいなオバさんに絡まれていたところだったので、タイムリーでした。

親元を離れ、自然の中で共同生活を送ることで、子どもたちの自立心と思考力を養うという理念の〈ミライの学校〉だったが、ある事件をきっかけにカルトと糾弾されるようになってしまう。
その後、〈ミライの学校〉の跡地から、子供の白骨死体が発見される。
小学生の頃に〈ミライの学校〉の夏合宿に参加したことのある弁護士の法子は、遺体がかつての友人・ミカではないかと不安になり・・・。

〈ミライの学校〉時代の法子とミカ。
30年後の現在の法子とミカ。
いったりきたりして、収束していきます。

長いです。552ページ。
長いわりに、いや、長いからか、辻村さんの一番書きたかったことがよく分からなかった。

実情を知らない人がカルトと決めつけることへの疑問。
親や大人に振り回される子供達。

私は辻村さんがカルトをテーマにしたことに興味を持ったのですが、その点においては物足りなかった。

それよりも、子供の頃の「忘れないよ」という、無邪気な残酷さみたいなものが強く残りました。
そいういう意味では、舞台を特殊な学校にしたのは正解でしたね。
ミカはずっと〈ミライの学校〉にいるけれど、法子は夏休みの1週間だけの合宿で、去っていく。
ミカにとっての「忘れないでね」というのは、法子が思っているよりずっと切実なのです。
その辺りが切なかったな。

私は小1の3学期をまるまる休んで、北里病院に入院していたのですが、私より前から入院している子供達と仲良くなって、そして私の方が先に退院していくのですよ。
子供心に退院の日を言い出せなかったことを思い出しました。

辻村さんの『ツナグ』の9年振りの続編です。

一生に一度だけ、もう一度亡くなった人に会えるとしたら、あなたは誰に会いたいですか?

ポイントは、死者側もそのチャンスは1度しかないということ。
例えばAさんがBさんに会いたいと思っても、BさんがそのチャンスをAさんに使いたくなかったら、断れるということ。

依頼人と死者を繋ぐ使者である歩美(男性)が主人公の短編集です。

連作長編だった前作の方が読み応えがありました。
短編集はサクサク読めてしまうけれど、やや物足りない。

婚約者の坂庭真実が忽然と姿を消してしまう。
彼女は行方不明になる前、ストーカーに遭っていると言っていたが…。

第1部は真実の婚約者である西澤架が真実の行方を捜すパート。
架は真実と婚活アプリで知り合ったのですが、彼女の行方を捜すうちに、彼女がどんな婚活をしてきたかも明らかになっていきます。

第2部は真実の視点で描かれていきます。
いわば、辻村版「ゴーン・ガール」的な。

タイトルが、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』を彷彿させますが、本作はまさに辻村版・現代日本の婚活小説と言えるでしょう。

真実が登録していた結婚相談所のオーナーの言葉が金言です。
「結婚相談所は最後の手段ではありません。最初の手段なんです。もう少しお若かったら、こちらでも手立てがあったのに」
「うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人」

真実がね、全く好きになれないタイプなんですよ。
進学も就職も意思が無く親の言いなりで、そんな自分をいい子だと思っていて、「私は控え目だから」「私はそんなに強くないの」と言いながら、インスタで(写りの良い)自撮り写真を上げまくるという。そして自分は学歴も収入も低くて見た目も地味なのに、結婚相談所で紹介される男性を「婚活って、こういう理想とかけ離れた相手を紹介されることなの?」「ピンとこない」と一蹴する。

えーっと・・・傲慢ですね?

なのでこのラストには全く納得がいかなかった。

まぁ、実際、男には何も見えていない・・・と思うけどね。

素晴らしかったです。
私、前作の本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』は正直面白さがよく分からなくて。
辻村さんの著作も全て読んでいますが、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』が一番好きです。
辻村さんはストーリーテラーではなく、文字にしにくい人間の感情という目に見えないものを文字にするのが上手いのだと思うのだよなぁ。

本作はタイトル通り、「ある過去に起因した、噛みあわない会話」を描いた4つの短編が収録されています。
過去に言われた・言った、悪気のない一言。
たとえば、「もっと良い人がいるってー!」とか。

私は4篇の中で『ナベちゃんのヨメ』が一番突き刺さりました。
大学のサークルで、女子達と仲良しだったナベちゃんという男子が結婚することになるのですが、奥さんになる人がちょっとアレな感じなのですね。で、女子達は裏で「なんであんなのと結婚するんだ」「ナベちゃんにはもっと良い人がいる」的なことを好き勝手に言うのですが。じゃあ、あなた達はナベちゃんと結婚したいのか?もしくはもっと良い人を紹介できるのか?と訊いたら、「否」なんですよ。大学時代もナベちゃんを良い人だと便利使いしていたのだけど、誰もナベちゃんを恋愛対象として見ていなかった。

ナベちゃんにとっては、彼女は初めて、自分のことを一番にしてくれた相手な訳です。
確かにKYでアレかもしれないけれど、じゃあ他に誰が自分を一番の相手と思ってくれる訳!?ということですよ。

他、あぁ・・・と思わず隠れたくなるような辻村さん真骨頂の会話劇が満載です



大物女優が運転する車が深夜に事故を起こした。
助手席には劇団に所属する俳優の父親が乗っており…。


その女優が事故の後に自殺してしまったことから、事態は大事に。
父親は姿を消してしまいます。

マスコミに追われ、匿名の嫌がらせを受けた妻と10歳の息子が逃避行する話です。

四万十⇒家島(瀬戸内海)⇒別府⇒仙台
その場所その場所で、良い人たちに巡り合え、さほど辛い思いはしません。
人情ものが好きな人は感動するのかも。

私はもっと人間をえぐった小説が好きなので、正直物足りなかった。
きっと角田さんや桐野さんが書いたら、もっとシビアな感じになるのだろうなと。

タイトルなんて読むのー?ですよね。

宮部みゆき・辻村深月・薬丸岳・東山彰良・宮内悠介
によるアンソロジーで、タイトルはそれぞれの頭文字を取っています。

念願のマイホームを購入した一家が、家の悪口を言ったところ、災難が降り注ぐ。
など、世にも奇妙的な、ちょっとホラーっぽい不思議なお話がリレー方式で綴られています。

ちょっと期待し過ぎてしまったかなぁ。

もっとちゃんとリレーするorもっとテーマを統一するなど、コンセプトをもっとしっかり固めた方が良かったのではないかと思いました。

主人公はイジメに遭い学校に行けなくなった中1のこころ。
5月のある日、突然自室の鏡が光り始め、こころは鏡をくぐり抜ける。
その先にあったのは、城のような不思議な建物で、こころと似た境遇の7人が集められていた。

7人の前に狼の仮面を付けた少女が現れ、この城の中に隠された「願いの部屋」とそこに入る「鍵」を見付けた者はどんな願いでも叶うと告げる。
期限は3月30日。
城に入れるのは9時から17時まで。

7人はイジメや家庭の事情で不登校になっており、徐々に城での生活が支えになっていきます。
それぞれが抱えている事情が明らかになり、そして驚くような共通点が他にあることが発覚し、そしてラスト。
最初からファンタジーなんだけど、ものすごくダイナミックなファンタジーに変わるというか。
あぁ、そういうことだったのか!と。

私の好きな、一人一人の今この瞬間の選択が未来を作るというテーマを感じました。

辻村さんは最近、大人の女性を主人公にした作品が多いですが、今回は初期の頃のような作風。
でも大人だろうと子供だろうと、生き辛さを感じている人を主人公にしているのは共通しています。

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